第5話 ごめんなさい
ごめんなさい。
崇は未亜に運命の相手を見つけたと、晴城が運命の相手だと言ってから、晴城に謝った。
突然運命の相手だなんて、未亜に言ってしまってごめんなさい。
穏やかな笑みだった。
儚い笑みだった。
「私はあなたに、晴城にとても助けられました。こうして未亜と再会することができたのは、未亜が頑張ってくれたことはもちろんですが、あなたが私の傍にいて励まし続けてくれたおかげでもあると、強く思っています。あなたは素敵です。とても。だからあなたは私にとって、運命の相手だと。未亜と同じ、とても大切な存在だと、伝えておきたかったのです」
未亜に最初に言ってしまいましたが。
照れくさそうに笑った崇に、胸を鷲掴みさせられた。
告白された晴城もだが、未亜も、である。
(く、くうううう。に、兄さんの今まで見たことがない笑顔。もう、どう表現すればいいかわからないけど、とても貴くて尊い笑顔。私に向けてほしかったけど。けど)
崇の笑顔に釘付けになっていた未亜は晴城を睨みつけた。
崇の貴くて尊い笑顔の中に、影を見つけたからだ。
崇は晴城を見つめたまま、言葉を紡いだ。
「伝えたかっただけです。気持ちを受け入れてほしい。新しい関係を築きたい。そういうことは考えていません。あなたは、私が独り占めできる存在ではありませんからね。みんなを甘やかしては虜にする、生物たらし、と言えばいいのでしょうか。まあ、そもそも独り占めしようとも思っていませんし。ただ、感謝の気持ちとともに私の気持ちも伝えたかっただけなので。ありがとうございました。本当に」
崇は晴れやかに笑った。
晴城は胸を鷲掴みする力がどんどん強くなって胸がとても痛くなった。
未亜は晴城を睨みつけたまま、険しい顔になった。
(2023.5.17)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます