第4話 団結

───ベルギー王国 ブリュッセル 欧州連合本部 2026/6/13 ██時██分(UTC準拠)


ポルトガル海軍がカンデラ王国所属艦と接触している間、欧州連合理事会では類を見ない光景が広がっていた、大陸消失巻き込まれなかった欧州連合加盟国以外のユーラシア大陸に属する国家である中国・日本・イスラエル等の全ての国の国家元首がこの場に集まることとなった。集まるにおいて椅子が足りずにパイプ椅子を利用したりしているが。


そしてこの日は地球の国際社会に重大な出来事が起こる日となっていた、それは臨時の国際連合の正式創立である。アメリカ合衆国のニューヨークに存在した国連本部が無くなった今、国際的な大きな取り決めを多数の国家で行ってきたヨーロッパの欧州連合本部が簡易的な国連総会となっていた。現時点では国連安全保障理事会などに関する取り決めなどは後回しにされているが、各国の協調性を確実な物とするために今回正式創立することとなったのだ。国連事務総長にはグテーレス国連事務総長の後任として欧州理事会議長やベルギー王国の首相を務めたヘルマン・ファン・ロンパウ氏が選ばれている。


そしてもう一つ重要な事がある。それはこの世界における最初の人工衛星の打ち上げが現存する全宇宙基地にて行われようとしている事だ。


打ち上げシーケンス自体は円滑に行われ、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地や中国の酒泉衛星発射センター、スウェーデンのエスレンジ射場などから十数基の通信衛星、放送衛星、地球観測衛星、航行衛星、気象衛星が発射され惑星の周回軌道に乗る事が出来た。


各国首脳陣が打ち上げ成功を祝う中、ポルトガル本国からある報告が届く事となる。

内容は以下の通りである。


「カンデラ王国所属と名乗る船がポルトガル海軍所属フリゲート艦と接触し、外交関係を結びたいと話している」


と言う連絡であった。報告後、議会内はざわめき始める。


「どう言うことだ?ここは地球では無いと言うのか?」

「アメリカなんかが無くなったんだ、その可能性もあり得るだろう」

「そのカンデラ王国と言うのはどの国の所属なんだ?少なくとも私は聞いた事すらないぞ」

「ああ私もだ、連邦国家に属していると言うわけでもあるまい」


議会内がカンデラ王国と名乗る謎の勢力についてざわめいていたその時、勢いよく議会扉が開き、情報官である男が入ってくる。


「事務総長!これを!」


彼は息を切らしながらも端末を開き、ヘルマン事務総長に画面を見せる。


「早く繋ぐんだ……皆さん、先程各宇宙基地にて衛星からの通信を確認したとのことです、そして……」


ヘルマン事務総長は情報官に画面を切り替えるように合図し、情報官は端末を使い画面を切り替える。仮設されたプロジェクターが画面に映し出したのは紛れもなくこのユーラシア大陸と周辺の島国であるが、本来アメリカ大陸が存在する場所にもオーストラリア大陸が存在する場所にも、あるべき大陸は無く、見たことのない地形をした大陸が存在していた。


比較的、議会はパニックにはならなかった、ここにいる誰しもがこの可能性を予想していたからであろう。


「このように我々ユーラシア大陸の国々は新世界に移転している事が分かりました、そのため例の……カンデラ王国でしたかな、彼らもこの世界の住民である可能性が高くなりました。そのため我々は一刻も早くこの世界について理解し、彼らの信頼を勝ち取らなければならないと思われます」

「全くその通りです」


話したのはイスラエルの首相であるベンヤミン・ネタニヤフ氏であった。


「今事務総長がお話しになった事や現在我々が置かれている状況を見るに異世界との国交確立は重要な物となるでしょう、そのため私ははまずポルトガルいるカンデラ王国船から国交ルートの樹立を確立すべきであるとし、ここに国際連合によるカンデラ王国との国交樹立に関する採択案を提出致します。」


議会内は拍手に包まれた。今ここにいる者たちが一段となり、この事態に対処しようとしているのだ。その後の採択はスムーズに進み、決議され、国際連合としてユーラシア大陸の国々はカンデラ王国との外交を行うこととなるのであった。


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