第3話 接触
───大西洋 カンデラ王国第一次偵察隊 5026/6/13 ██時██分(カイチ標準時準拠)
大きな帆を掲げ、綺麗な弓形陣を組んで海面を移動する姿はカンデラ王国海軍の練度を表す物であり、遠くから見れば威圧的とも見える物であった。この艦隊に彼らに与えられた任務は新大陸を偵察し、文明が存在するならば同乗する外交官と共に文明と関係を持つ事であった。
司令官であるリベッデ・パコマは副長と共に船首にて完璧に整った陣形を見て満足していた。
「ふむ……美しい」
「この連携はどの国にも真似できません、原住民に舐められる事もないでしょう」
「奴らの文明がどのような物かも分かって無いがな」
「この目で確認してからにしましょう」
───大西洋 ポルトガル海軍所属コルテ=レアル艦内 2026/6/13 ██時██分(UTC準拠)
「艦長、11時方向に船舶と見られる反応を13隻確認、本艦に7ノットで接近中」
「
「応答ありません」
「レーダー反射量が少ないのか?それとやけに遅いな」
「レーダー
「本部と繋げ」
「了解」
アンヘル・ベラスコ艦長は神妙な顔でレーダーに映る点を見ていた。
「繋がりました」
「こちらF332コルテ=レアル、本艦より西に32kmに不審船を11隻確認、命令を……了解対応します」
「本部は何と?」
「リンクスを出せ、距離を取って追跡させるんだ」
「了解、こちら
F332コルテ=レアルの後方甲板からイギリス製のスーパーリンクス Mk.95哨戒ヘリコプターが発艦して行った。数十分後にはすでに目標艦船を捕捉しているようで艦橋には通信が入った。
「こちらタウミエル1-1、目標艦船を補足、現在より追跡行動を行う。」
「了解、不審船の様子と所属は?」
「あー……帆船です、側面に穴が空いているので戦列艦でしょう、所属は不明です。カメラを起動します」
艦橋のモニターに映し出されたのは、整った陣形で水面を進む11隻の帆船であった。
「見たことない国旗だ、地方の旗の可能性がある、照合にかけろ」
「了解」
───大西洋 カンデラ王国第一次偵察隊 5026/6/13 ██時██分(カイチ標準時準拠)
「なんだあれは!」
「鉄の龍だ!」
「魔力で浮いているのか?」
ポルトガル海軍が不審船を追跡し始めたのと同時刻、カンデラ王国の帆船では初めて見るヘリコプターに対する対応を考えている最中であった。
「あの鉄の塊は見た事がありません、おそらく上で何かを発生させているように見えますが……魔力反応もありませんでした」
「魔力で浮いていないだと!?そのような事があるものか!」
「いや、巧妙な隠蔽魔法を使っている可能性もある……暗殺などでよく使われる手だ、魔力を残留させないために使用するんだ」
「隠蔽魔法であそこまでできるものなのか?」
「魔術大国ではできるでしょうが……」
結局、彼らでは何故飛んでいるのか分からずにただ見つめる事しか出来なかった。
───大西洋 ポルトガル海軍所属コルテ=レアル、タウミエル1-1 2026/6/13 ██時██分(UTC準拠)
「こちらF332 タウミエル1-1、目標を不審船とし、マニュアルにしたがって立ち入り検査を行う、本艦より0.5kmに接近した時に停止命令を勧告せよ」
「こちらタウミエル1-1了解、対応する」
数十分後、カンデラ王国所属船がF332 コルテ=レアルに接近した時、スーパーリンクス Mk.95哨戒ヘリに搭載された拡声器より、停止命令を勧告した。
「こちらはポルトガル海軍所属機である、貴艦らは臨検の対象のため直ちに停止されたし、繰り返す 貴艦らは臨検の対象となっているため直ちに停止されたし」
F332 コルテ=レアルがカンデラ王国所属船に近づくと共に帆船は速度を落としていく。
───大西洋 カンデラ王国第一次偵察隊 5026/6/13 ██時██分(カイチ標準時準拠)
「あれは……鉄の船だ!」
「艦長に報告してくる!」
ヘリコプターに続き、鉄で作られたにもかかわらず浮く船というものは彼らはあまり見たことのないものであった。それがフリゲート艦という軍艦の中で小型のものだとしても彼らへのインパクトは計り知れない物があった、もっとも高速戦闘艇でも同じ反応だろうが。
「こちらはポルトガル海軍所属艦コルテ=レアルである、現在より貴艦に臨検を行うため乗船に備えてもらいたい」
「拡声魔法を」
リベッデ司令官は急ぐように同乗している魔道士を伝ってF332 コルテ=レアルに話そうとする、魔道士は詠唱を行ってリベッデ司令官の声を拡大させる。
「こちらはカンデラ王国の第一次偵察隊である、貴艦は新世界のものであるか?であるならばそちらの代表と話がしたい、この船は外交官を乗せている。」
リベッデ司令官は頬に汗をうかばせながら話しかける。彼らが敵対的であるならばカンデラ王国の安全保障問題に関わるものとなるからだ。数秒であるが長く感じたであろう沈黙を破ったのは拡声器で拡大されているものの落ち着いている声であった。
「我が艦艇とご同行願おう」
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