第二怪火葬が終えたら名無し③


地獄の獄卒も天国の仏も落涙する人間界。


デュラハン、暴走族と首無しライダーは密接だが、一人の猛者がいたのである。


戦瀬黒猿が元気にバイクで走る裏鬼門、旧由良トンネル付近、事故死アンラッキーな死体の人間があったのだ。


その男は単なる暴走族の男性だった。


死乱がまた人を殺したのだが、問題は彼が根の国の三代目がスサノオである事を知っていた。イザナミの前にも黄泉神がいる。


ならば、四代目黄泉神になりたい。


死にたくない、いや、まずは殺したい。


死にたいよりも殺したいが優先された。


「平安時代のと二の舞だね」


戦後、その曰く付きの死神は彷徨っていた。彼の転生する肉体が受胎するのは先の話だ。


四代目黄泉神、甘美な言葉にも聞こえる。


「死乱」


と、彼は彼女に声をかけた。


「え?あぁ、よく気づけたわね、似非霊能者には最強の悪霊という言葉を無意識のうちに蔑ろにする傾向があるから、私のようなそもそも死ぬたびに怨みも呪いを発しないけど、死後に増える邪念は検知しづらい」


そこにもう一人の女性が現れた女暴走族レディースの特攻服を着て煙草を咥えた真淵風香まぶちふうかだ。


「一応、私も陰陽師の家系でね、四代目黄泉神を始末するのを託されている者だよ」


死神と死乱、真淵風香は会話を始める。


死神は告げる。


「ん?まぁ、いいじゃないか、私もいつか、それを襲名したいと思っていたんだ」


真淵風香は舌打ちをする。


「………貴様が言いたい事がまったく分からない。根の国と現世の境目が崩れると、黄泉のに犯されて殺人が増えるんだよ」


死乱は喜び、肯定した。


「別にいいじゃない、卍は生命の豊醸を意味するけど、逆卍は死と破壊を意味する、つまり、四代目黄泉神に私も入りたいわ」


真淵風香は彼等の頭を鎖を巻いた木刀で叩いた。あまりにも疾風怒濤の出来事だった。


死神は一回、面倒になり前言撤回した。


「彼についての処分は任せるよ、次の自分が彼のようにならないとは限らない、彼はバットで殴られて脳挫傷起こしたまま、フルスロットルでテンションマックスして、頭部の古傷が弾けとんだらしいじゃないか」


それに真淵風香は嫌な顔をする。


「こんなイカれた時代で、もっとイカれた事を考えるやつがいるのが不満なんだよ」


その死神は微笑んだ。


そこに四代目黄泉神と書かれた特攻服を着た男が死乱に向かう。死乱は銃を取り出す。


大阪闇市から裏社会で流通している安物のトカレフ、発射する弾丸も平凡なものだ。


だが、込める殺意、念が膨大すぎた。


「あら、私を殺せると思っているの?久しぶりね、そういう男が目の前にいるのはね」


放たれた弾丸は一撃必殺だ。四代目黄泉神族長がたった一撃で再び殺されたのだった。











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