「大祓魔術」(1)
翌日、私達は朝早くからバスに乗って千歳神社へ向かった。現地に到着すると、まずは係員を通して神主に会おうと考え社務所へ向かった。
しかし社務所で私達を待ち構えていたのは巫女ではなく、いかにも神主っぽい派手な装束を着た男だった。
「ようこそ千歳神社へ、お話は学長の方から聞いております。ささ、まずはこちらへ」
こちらの返答を聞くまでもなく神社の奥へ私達を連れて行く神主。連れられた先で私達は――。
なぜか、座禅をさせられている。
「いいですか? 霊という物は生者に対しまず精神的な攻撃を仕掛けます。呪いなど掛けたところで祓われるだけだと、彼等は本能で知っているのです」
座禅をする私達の後ろをうろちょろする神主。その手には、長い木の棒が握られていた。
「なので、まずは心を無にする方法を身につけましょう。揺らぐ心がなければ幽霊も対処しようがありません。戦いのことを考えるのはその後です」
「なるほど、それは理に適ってますね――」
口を挟んだ瞬間、左肩を思いっきり木の棒で叩かれた。ギリギリで保っていた姿勢がその殴打によって崩れてしまい、地面に倒れ込んでしまう。
「座禅中はおしゃべり禁止! 精神を統一し、心を無にするのです。彼を見習いなさい彼を」
彼の方に目を向けると、なんと彼は微動だにせず座禅の姿勢を保っていた。
「彼はもう心を無にする手段を確立しているようですね。頼もしい限りです」
しかし何か様子がおかしい。よくよく彼の事を観察してみると、彼は完全に目を閉じていた。
「神主さんコイツ完全に目を閉じてます! 寝てませんかこれ!」
私がそう告げ口すると、すぐに神主は彼の右肩を思いっきり棒でひっぱたいた。すると彼は目を覚まし、前傾姿勢になって痛みにに悶え苦しんだ。
「……さすがに、ここに来てすぐ座禅しろと言う流れは悪手過ぎましたね。申し訳ありません二人とも。別の方法を考えます」
「私達の方こそ申し訳ないです、座禅1つ禄に出来なくて」
「いえいえ。心を無にする方法を習得するなら座禅が最短の道だったと言うだけなので、座禅が出来ない位で見捨てはしませんよ」
それから神主は座布団を二枚用意し、そこに座るよう私達に促した。私達がそこに座ると、神主は正座をして話を始めた。
「まずは自己紹介を。私の名は宗像俊樹。15年前に山形魔法中等学校を卒業した後、先代から神主職を継いで現在に至ります」
「18歳で神主に……すごいなあ。それで最初に聞きたいんですけど、この大祓魔法って魔術師なら誰でも修得可能なんですか?」
「そうだと思います。この魔法を教えるのは貴女方が初めてですが、結局これって普通の魔法にちょっとした工夫を施しただけの物なので大丈夫かと」
「早速ですが、その工夫について説明を頂いても?」
「魔法の構成に関する詳しい工夫は後ほど説明しますが、1つだけ、実際に見て分かるものがあります」
神主は彼と私に一つずつ木箱を渡した。開けて中を見てみると、そこには三枚の札が入っていた。
「この大祓魔術ではこのお札を使って魔法を行使します。これは我々が幽霊に対し物理的に干渉する唯一の手段で、これを幽霊に貼り付けることで初めて幽霊に魔術を行使することが出来ます」
札を手に取ってみると、確かに札から特殊なマナの気配を感じる。
「では授業に入りましょう。今日も明日もかなり多忙で、一日四時間しか教えられないので授業のスピードをかなり速くします。置いてかれないよう、気を確かに持って挑んでくださいね」
「は、はい」
かなり自信無さそうに返事を返す彼。そんな彼を不安に思いながら、私は神主の後ろに着いていくのだった。
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