「北海道魔法中等学校」
「新しい魔法学校、ですか?」
ふと零したその言葉に、鷹守君は激しく興味を示した。
『その名も北海道魔法中等学校。建設計画自体は二年前から進んでいた。しかし、建設予定地にあった廃校を解体しようとすると怪死事件が相次いで起こってしまうらしく作業が進まないんだ。君にはその問題の根本を解決し、工事を先に進められるようにして欲しい』
「ちなみにその問題は、ちゃんと私達でも解決できる物なんでしょうか?」
『もちろん。そして、この一件に関してはは君の隣に居る子が特に役に立つと思っているぞ』
そう言われて少しドキッとした。まさか、私が弟子を取ったことを学長に知られていたなんて。
「……どうやってその事を?」
『那覇空港に入るまでの間は君の動向を観察していた。君が非術士のチンピラをボコボコにした所もしっかり見てたぞ。金輪際、非術士相手に力を振るう行為は辞めるように』
「善処します。それで、なぜ彼がこの任務に役立つと学長は考えたんです?」
『まあ簡単に言ってしまえば、その任務の内容が幽霊退治だからだな』
「え、魔法で幽霊退治を?」
その言葉を聞いた瞬間、彼は肩をふるわせて驚いた。
『そうだ。何でも空港の近くにある千歳神社には、魔法と神事を組み合わせた大祓魔術なるものを開発した神主がいるそうだ。その人物から大祓魔術を二日間かけて学び、多忙で現地に行けない神主の代わりに霊を祓って欲しい』
「二日で魔法を新しく学ぶって……私じゃなきゃ到底無理な話ですよ」
『いや、鷹守君もかなり適性があると思うぞ。なにせ彼の実家は神社だ。幼い頃から神社でお祓いの現場に立ち会ってきた彼ならば、もしかしたら早々に身につけてくれるかも知れない』
「どんな理屈なんですか。とにかく、学校の建設予定地に行ってそこに蔓延る幽霊を全部祓ってくれば良いんですね?」
『ああ、頼んだぞ』
その言葉を最後に電話は切れた。それから彼に対し、学長とした話の内容を丁寧に説明した。話が終わると、彼は唐突に大きなため息をついた。
「……確かに僕の実家は神社です。ただ、それと幽霊退治の技術を身につけられるかは話が違います。第一、僕は実家でお祓いの現場さえ見たこと無いんですよ?」
「だよね。でも任せて、君が一度で理解できなくても私が後で復習を手伝ってあげる。だから不安がらずに自信を持って事に当たろうね!」
「なら安心です、師匠の教えの上手さは飛行機の中で確認済みですし。ですが、僕も自力で理解できるよう努めます。優秀な弟子だって、思われたいですから」
彼は真剣な顔でそう言った。私はそんな彼がとても可愛らしく思え、思わず彼の顔を胸元に抱き寄せてしまう。
「もう鷹守君ったら! わざわざそんな事しなくたって君は私にとって既に優秀な弟子なんだぞ!」
「そ、それは光栄極まりない話ですが……暑苦しい、です……」
彼が零したその悲鳴に気づかず、私はそのまましばらく彼を抱いて可愛がっていた。そのせいでチェックインが大幅に遅れ、危うく閉め出されそうになったのはまた別のお話。
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