空想的詩的恋愛感情
春雷
第1話
ああ、馬鹿だな、僕は。
いつも一歩踏み出すことに怯えて、
怖くて、
震えて、
なんにもできない。
どうして傷つくことを恐れてしまうんだろう。
傷つきたくない。
それは何故?
僕はただ君に近づきたい。
君を知りたい。
もっと深い場所で触れ合って、
秘密を分け合って、
傷を舐め合って、
冷たくなった体温を、
心を、
確かめて、
そして、
二人のマグマで、
どろどろに溶けてしまうくらいに、
熱を持ちたい。
けれど現実の僕は、
立ち止まっていて、
その場に立ち竦むばかりで、
君への距離は遠い。
傷つくのを恐れて、
踏み出せない。
踏み込めない。
中途半端な知恵を使って、未来を予想しては、
悪い方向にばかり想像を膨らませてしまう。
それで僕は空想の君と遊ぶ。
空想で君と触れ合って、
それで満足しようとする。
想像の中の君は優しくて、僕に甘い。
でも僕は知ってる。
君は本当は怖い一面を持っているんだ。
冷たく乾いた心を。
僕の想像する君と現実の君はやはり違う。
僕の想像している僕と現実の僕もやはり違うのだろうか。
僕は傷つきたくない。
でも君に会いたい。
辛く悲しいことがあった日は、安らぎを求めて、都合よく君を思い出す。
想像の中では、僕と君は結構仲がいい。
でも本当は、きっと、君は僕のことなんか覚えちゃいないだろう。
だって僕はいてもいなくても同じような、価値のない人間だし、
暗いことばっかいつも考えていて、
気色の悪い人間だし。
馬鹿だし、間抜けだし、いやもう本当駄目な人間だし、
どうすればいいんだ僕は。
ぐるぐると思考は同じところを辿って、
僕は今日も現実の君を失い続ける。
君と過ごせる時間は削れていくけれど、
きっとそもそも君と過ごせる時間など現実には一秒たりともなかったのだと、
諦めて、
眠って、
それら全てを忘れる
空想的詩的恋愛感情 春雷 @syunrai3333
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