第四話 伝説の勇者
「休戦協定を結ぶ!」
チェンバレンのこの一言に、会議室は静かになった。
「どういうことですか!?プライセンに我々が膝をつけるのですか!」
「我が国はゴースランド大陸の始祖ですぞ!」
チェンバレンは閣僚や将校から猛烈に批判され、結局休戦ではなく本土決戦で最後の一人まで戦う決意を見せた。
一方、プライセンにも暗雲が立ち込めてきた。
ヒトラーが老衰により、満足な指揮や計画立案ができなくなっていたのである。
かねてより後継者を探していたヒトラーは、リューネスブルク・ムヒラーの二人を総統官邸へ招いた。
執務室でヒトラーは、車椅子に座りながら二人に話した。
「私はもう限界が近い。私の党首の座と、二代目総統を今決める必要がある。」
「総統、何をおっしゃられます。私どもは総統あってこその我らなのです。」
「その通りです。我ら全員、総統とともにあるのです。」
「いや、それはダメだ。この戦争はもう佳境に入っているが、恐らくこの戦争の次にはブリヤートとの戦いが待っている。私はもうその戦争に指揮をしたくはない。」
一呼吸おくと、ヒトラーは答えた。
「ムヒラー、2代目プライセン総統。リューネスブルク、次期党首。いいか、君たち二人が、次の時代を作っていく必要があるのだ。以上。」
官邸を後にした二人は、党員御用達のBarで話し合った。
「総統はこのプライセンを大きく変えたお方だ。私たちにはその大役を引き継ぐのは早すぎる。」
「今まで総統のカリスマがあってこそ、プライセンは収まっていた。だが、総統が身を引けば迫害されてきた人外種の反乱もあり得る。そうなれば我が国は他国から襲われるに違いない。」
「まさか、人外種は一人残らず粛清されたはずだ。」
一呼吸おいて、リューネスブルクが言った。
「言ってなかったが、私はパンペルクの元地主だった。総統がガウの設置をしても、総統は私をそのままパンペルクのガウライターにしてくれた。私の家計は代々人外種との交配が続いてきた。そのため…私は、パンペルクの人種迫害の命を拒否したのだ…」
「…そうだったか。」
ムヒラーはそう呟くと、席を立って…
「場所を変えよう。なんとかして、この戦争を早く終わらせる必要がある。」
_____________
一方アルザスでは、一人の青年が国の行方を握っていた。
アルザスに古くから伝わる、救国の人間。そして、その人間を支える三人の女性…その伝説にそっくりな四人組が、確認されたのだ。
「本当なのか!?本当にいたのか!?」
「はい、現在応接室にて首相をお待ちしております。」
チェンバレンは軽い足取りで応接室へ向かった。
扉を開けると、そこには青髪の青年と、2人のエルフ、そして角の生えた少女がいた。
青年の見た目は、身長は160ぐらい。体型は引き締まってはいるが鍛えられたわけでもないようだ。2人のエルフは、片方は白で、もう片方は黒。
少女の見た目は、容姿は人間そのものであるが、目は赤く、何かを企むようだった。
「ようこそいらっしゃいました。救国の四英雄。私はチェンバレン。首相をやっております…」
「…そんなことはどうでも良い。私がきたのは取引のためだ。」
やや上から目線な対応に、チェンバレンは閣僚たちに目配せをした。
「取引といたしますと、どのような?」
「この国を救う。代わりに、私がこの国の王になる。」
その言葉を聞いた瞬間、チェンバレンは数秒黙り込み、高らかに笑った。
「…はっ。ははは!英雄殿も冗談がうまいですな。もう一度言ってくだされ。」
「聞こえなかったか?この国を救うから、私にこの国をよこせ。」
嘘を言っているようには見えなかった。
少年の目は、凍えるような冷たい目で見つめていた。三人の女性も、何も言うことはなくただ立っていた。
チェンバレンも、少年の言葉に嘘はないと確信した。
だがそれと同時に、態度を変えた。
「ふざけたことを言わないでいただこう。我が国の歴史に泥を塗るのか!そうか誰か!このふざけた者どもを放り出せ!」
何人かの衛兵が、少年たちの周りを囲んだ。
「警告する。私に触れてみろ。命はないぞ。」
「おどしだ!刺し殺しても構わんから放り出せ!」
「わからずやめ!」
次の瞬間、少年の髪が逆立つと煌めく閃光が放たれ…
次の瞬間には、衛兵は潰されチェンバレンも怯えたようにその場に蹲っていた。
「まだやるのか?」
「わかった!わかった!だがな…もし負けたらどうする!」
「…負けることはなかろう。」
そういうと、少女と共に部屋を出ていった…エルフたちも、消えていた。
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官邸から約2k地点…プライセン軍参謀本部
この頃ヒトラーは、アルザスが無条件降伏を飲むまで進軍を停止させていた。
そのため前線の兵士たちは、昼間から酒を飲んだりと戦闘状態とは思えない光景になっていた。
「一体いつになれば故郷へ帰れるんだ。」
「まあ待て、アルザスの降伏も時間の問題だろう。指揮官達が今後を話し合っているんだからな。」
指揮官達は、アルザス降伏後の武装ゲリラに備えた対策案を考えていた。
そんなプライセン軍に、4人の旅人が訪れてきた…
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