第五章 四度目の世界大戦編
第一話 リーグレの崩壊
プライセン軍の侵攻により、ペレ近郊では激しい戦いが行われていた。
それでも、ルイーズは前線兵士へ物資も救援も送らなかった。ルイーズは戦いに敗れるのは戦う気力がないとして、一切れのパンも与えなかった。さらに、側近たちがルイーズの非道な処刑を喰らうのを恐れていたからでもある。
寧ろ側近の中には、プライセン軍に情報を提供するものもいた。
近衛兵をはじめ、ルイーズが直接の指揮権を持たない軍隊は連日連夜ひっそりとプライセン軍へ投降していた為、首都にはもう旧FPとルイーズの指揮する薔薇隊・王宮衛兵・エアオーベルングを接種した親衛隊のみの、計10万だけだった。
「全くもって嘆かわしいわ。我がリーグレに貴方達は泥を塗ったのよ!」
手に持っていたワイングラスを床に叩きつけ、ルイーズは将校たちに当たっていた。
「しかし大統領…前線に援助物資も送らず、国民にプライセン軍が侵攻してくる事を秘密にしたのは貴方です。貴方がこの戦争で、我が国を破滅へ導いたのだ!」
「黙りなさい!男の分際で。そうよ…貴方たちがプライセンへ情報を提供し、戦わないように指示したんでしょう!?」
「なんという事を…!私どもは国家のために今も全力で戦っているのですぞ!」
「ええい、男どもを今すぐ処刑台に吊るしなさい!」
「…これで我が国の運命は決まった。」
ルイーズは全ての男性将校を処刑させてしまった。
これにより、前線の将兵達には連絡が来なくなり防衛線を守ることは困難となった。その夜、前線にいた兵士たちは悉く降伏してしまった。
一方プライセン軍は、ペレを囲むように陣を張った。
ハンメルはカタリカの参戦を待っていたのである。いかにプライセン軍といえども、敵には旧FPの総隊長がいたからだ。
「ここに来て三日…今だカタリカは参戦をしてこぬ。総統の案がこれ以上遅れては我々も罰が降りそうだ。」
「指揮官、魔法使い共を使うのはいかがでしょう。」
「…!まさか、総統が許すわけがあるまい。」
「もちろんです。現在魔法使いは、総統が許可した者以外は全て収容所ですが、恩赦と言わせて前線で戦わせるのはいかがでしょう。」
この頃プライセンでは、ヒトラーによって人外種・魔法使いへの差別が国全体で行われていた。エルフやオークを始め、大量の人外種が新型兵器の実験台にされたり、魔法使いには強制労働で薬や魔法を作らせていた。
「よし、総統に一部オークやエルフを前線に連れて来させるよう伝えよう。」
こうして一通の書がプライセンへ送られた。
6月9日
ヒトラーは一部オークやエルフをペレ前線へ送らせた。
オーク族を先頭に、プライセン軍がペレへの集中攻撃を開始したのである。
元々戦闘民族だったオーク族は、恩赦の為に必死に戦った。だが、まともな武器は配給されずオーク達は道に落ちた石や、素手で戦う羽目になった。結果、国の9割のオーク族が死に絶えた。
6月10日 エルウェーウィンが参戦した。
リーグレではとうに主要閣僚や、将兵たちは次々と降伏。旧FP兵士も降伏した。
肝心のルイーズはプライセン軍に見つかった途端、持っていた毒薬で命を絶った。
フルール・ドゥアル・ソードの旗が、ペレの象徴でもある勝利の塔に翻った。
その後、各地で戦闘を行なっていたリーグレの各軍隊も首都陥落の知らせを聞いて降伏した。第二都市に逃げていたルイーズの妹、ルイーザ率いるリーグレ政府も降伏した。
6月21日第一次大戦でプライセンが降伏調印したコンピエーニュの森にて、今度はリーグレの降伏調印式が行われた。ヒトラーは、態々第一次大戦の際調印式を行った会場を再建させ調印式を行わせた。こうして、プライセンの恥をリーグレへ返したのである。
ヒトラーは軍楽隊に送られて、悠々と引き上げた。
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一方プライセンが戦っている中、ブリヤート連邦はバウンディング三カ国に最後通牒を押し付け、これを併合していた。南方方面ではベッサラヴィと北プコピナの割譲を要求。二つの都市を持っていたルークウェルは要求に屈し、連邦最高指導者のヒョードルはこれを併合させた。
「ルークウェルが占領されれば我が軍の石油と食料がストップしてしまいます。」
「ああ、ヒョードルは我々に高い金額で石油と食料をブリヤートから買わせるつもりだろう。そうしなければ、我々は戦争継続が困難になる。ヒョードルはずる賢い。今となっては我々はアルザスよりも、ブリヤートとの戦争が必須だ。」
ヒトラーはイギリスに対し、二度の停戦を提案した。
「私はアルザスへの戦争を行う気は毛頭ない。私は勝利者として、再びアルザスへ訴えかける。私は何故この戦争を彼らと行わなくてはならないのか、理解ができない!」
一方、アスコットはつっぱねた。
「我々は、ヒトラーが自身の手で身を滅ぼすその日まで戦うだろう!我々は我々の勝利を確信している。サインはVだ!」
この答えに対し、ヒトラーはアルザス本土決戦を覚悟した。
「これでアルザスを潰す口実ができた。しかし、「アシカ作戦」はまだ艦船最強化が不十分だ。今の木船では不可能だ。」
「総統、このヴィルムにお任せを。空軍と魔女連合艦隊でやっつけてあげましょう。」
「やれるのか?」
「はい、お任せください!」
こうして、バトルオブアルザスが始まった。
連日連夜、プライセンとアルザスのみが持つ戦闘機と魔女による空中戦が行われた。だがアルザス政府も最新の戦闘機と、魔女による戦いを行った。プライセン空軍はアルザスへ損害を与えたが、肝心の工場や首相官邸には全く攻撃できなかった。更に優秀な数少ないパイロットも数千を失い、制空権も取れなかった。
更に厄介なことが起きた。今度はブリヤートの真似をしてハンゲルがルークウェルに手を出し始めたのだ。ハンゲルは、ルークウェル国境付近のトランシルヴァニアを手に入れるために武力行使に出るとうったえた。ヒトラーはびっくりした。
「もしルークウェルに戦争が起きたら、どさくさに紛れてブリヤートが手を出すに決まってる。そうなったら我が軍は石油枯渇でおしまいだ。」
「総統、エルウェーウィンを誘ってルークウェルとハンゲルの間に平和協定を結ばせるのはいかがですか。」
「よし、ではそうしろ。」
8月30
プライセンとカタリカはトランスでルークウェルとハンゲル代表に枢軸連合の打開案を受諾させた。ルークウェルの代表は、トランシルヴァニアの半分がハンゲルに取られる地図を見て気絶した。
「その代わり、プライセンとカタリカは残りの領土を保障する。」
「は、はい…」
開戦から2年
ゴースランド大陸から西にあるユナイテッド大陸。その名前の由来となっているユナイテッド合衆国はアルザスへの武器・兵力の供与を発表した。
「総統、ユナイテッドは可能な限りの供与をアルザスへ行うつもりです。」
「ユナイテッドが出てくるとまずいことになるな。」
するとノアがこんな提案をしてきた。
「総統、ここは鳴神との協定を強化してはいかがでしょう。」
「鳴神人は強いからな。豆類を食べ菜食だし。」
「鳴神にユナイテッドを牽制してもらいましょう。」
かくしてプライセンから鳴神へ使者が飛んだ。
一方、鳴神総理 佐々木はプライセンの大陸征服に頭を抱えていた。
元々軍部では、鳴神の南部国家掌握である南進論が進められていたが東條が処刑されたことにより白紙となっていた。
これにより、北進論が佐々木により唱えられたがプライセンとブリヤート連邦は不可侵条約を締結しているため、行動を起こせずにいた。
そんな佐々木にプライセンの使者が来たのは、翌日のことである。
「ほう、プライセンは既に西大陸の半分を…」
「はい、それ故鳴神にはユナイテッドの牽制をお願いしたいのです。」
「なるほど…現在我が国は軍事技術の発展中であり、また経済も芳しくはない。我々はユナイテッドのいつ切られるか分からない援助政策に生かされているので、何ができるかは分かりません。」
「いえいえ、何も戦争を起こす必要はないのです。大平洋での海軍強化訓練などの牽制をお願いしており…」
「ははは、我が軍は毎日そんなことはやっております。しかし、プライセンとの新しい同盟成立には喜んで手を貸しましょう。」
「そのお言葉、総統もお喜びになります。」
かくして2040年9月27日、ベルランにおいて五条大使(鳴)リューネスブルク(プライセン)チアーノ外相(カタリカ)によって、大三国同盟が調印された。
その頃鳴神では…
「西にはゴースランド新秩序・東に鳴神大政権!世界はこの二つのものです!」
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