第五話 見破られた計画

リーグレとの国境沿いの街、アーエン。

この街はリーグレとプライセンが入り混じった歴史を持ち、二カ国の言語が使われている。

そんなこの街は、前回の大戦を経て非武装地域に指定されていた。ヒトラーはその非武装を、町民投票を介して武装化させた。


リーグレは非武装解除についての抗議声明を外交ルートを使って抗議したにすぎなかった為、ヒトラーも安心して駒を進めた。


リーグレ メンシー

リーグレ国防軍 対プライセン部隊本部

総括者 ペレト・ファユエン

「これがプライセン軍の指揮系統か。」


「はい、物見からの伝達です。」


「ふむ…これならば、亡命者を当てた方がいいな。我々はここでそれを、茶でも飲みながら見ていればいいだろう。」


一方プライセン軍では、指揮を任されたハンメルによって迂回ルートを模索していた。


「この道は今も使われているのか?」


ハンメルが目をつけたのは、かつてリーグレとプライセンの国境に作られた商人用の道路である。今は整備もされておらず、森林と化していた。


「いえ、ただリーグレが地雷を設置した可能性は十分に考えられます。」


「将軍、総統の宣戦布告前に部隊を展開させた方がいいと考えます。宣戦布告の後、我が軍が雷鳴の如く攻撃を掛ければ問題はないでしょう。」


「よし、総統にはそう伝えよう。」


作戦本部 総統官邸地下


「総統、ハンメル指揮官から電報が来ています。総統の宣戦布告発布の後、いつでも攻撃開始するとのことです。」


「よし…各国の大使館へ連絡しろ。我がプライセンは、これより第三次大陸戦争を開始するとな!」


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ゴースランド大陸中が、歓喜と悲鳴に沸いた。


2040年9月3日。第三次世界大戦が始まった。


プライセン軍は電撃的スピードでリーグレとディヴィジョンへなだれ込み、ディヴィジョンはその日のうちに粉砕された。

5日にヒトラーが首都シャーウィンターに入城すると、国民はその様子を何もすることなく見つめていた。


ヒトラーは、アルザス・リーグレに対して声明を発表。

「私はまごう事なき平和主義者である。この戦争は、二カ国「アルザス・リーグレ」が、我が国に対して批判されるべき圧力をかけてきたことによる仕返しだ。本来西部におけるこの戦いには、何の意味もない。我が国は二カ国に対して、降伏を要求する。」


アスコットはつっぱねた

「私は現在のプライセン政府も、プライセンそのものも信用していない。もしヒトラーが平和を要求するならば、直ちに奪った領土全てを返還していただきたい。」


11月8日 ミュー一揆記念日において、ヒトラーは思い出深いビアホールにて演説を行った。


「アルザス・リーグレがあくまでも戦争を望むというのなら、プライセンは何十年経ってもそれに応えるだろう!」


ヒトラーが演説を終え、ビアホールを去った直後に…爆発が起こった。

大量の木材が吹き飛び、死傷者は数百人に及んだ。


これはアルザスの謀略と国民には発表されたが、実は元共産党員がヒトラー暗殺のために仕組んだものであった。


ヒトラーは会場前に止めてあった公用車にノアと乗り込んだ。


「いやはや、流石は大天使の御加護だ。私がこのガブリエルの勲章をつけていなかったらば死んでいただろう。」


「はい、その通りです。しかし我々ナッティスの理想が東方生存圏拡大ならば何もアルザスと戦う必要はないのでは?」


「それはもちろんだ。しかしアルザスがあくまでも海上封鎖を行い足を引っ張るならばやらないわけにはいかない!」


ノアはヒトラーの言葉をただ聞くだけだった。


「我らがプライセンは資源獲得のためスキャンジュールへ目を向ける必要がある。」


プライセンはスキャンジュールの鉄鉱石を頼りにしていた。


「しかし既にアスコット首相はスキャンジュール及びノーチラス領海内に大量の海兵を展開しており…物資を送らせまいとしています。」


「うむ…海軍と国防軍を用いてスキャンジュール二カ国を保護する「ウェーゼル計画」を発動させろ。」


4月9日 ヒトラーはウェーゼル計画を発動。

アルザス・リーグレ連合軍はノーチラスに上陸し戦ったが、圧倒的な軍事力と科学力を持つプライセンに勝ち目がなく、撤退してしまった。


2040年5月10日 ヒトラーはついに対リーグレ計画である「薔薇作戦」を決行した。

プライセンは雪崩の如く進撃し、リーグレ衛星国の三カ国である「ロード、カッツ、リューク」を支配下に置いた。

ヒトラーは、ついに党設立の一つであった大陸制覇という夢への歩みを確実に踏み始めた。「今この時、我が国がなすこと全てが神の示しだ!」ヒトラーは叫んだ。


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リーグレ共和国 首都ペレ


ルイーズは対プライセン作戦本部にも行くことはなく、大統領公邸で優雅な時を過ごしていた。

戦争は全て亡命したFP及び男性戦闘員に任せっきりであり、自身と女性国民は本国が襲われる事はないと思い込みいつもと変わりない1日を過ごしていた。


当然この事がプライセン側に漏れると、ハンメルは予定通りリーグレが築いたドミノ要塞を二手に分かれて迂回しアンデルンの森を抜けペレへの道を雷鳴の如く歩んで行った。

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