第四章 刹那の契約編
第一話 我が故郷よ
ゴースランド大陸 北西の島国 アルザス
ゴースランドの歴史はアルザスにあり。と言われるほどこの国は歴史が古い。
魔法文明が始まった地でもあり、産業革命の産声が出た地でもある。
そして現在、そのアルザスを仕切るのがアスコット・チャーチルである。
彼は先の大戦で大切な親と親友をプライセンに殺されたことから、今でもプライセンを憎んでいる。彼が首相となってからは、アルザスのプライセンに対する外交戦略は悪くなったし、かつ貿易の面でもアルザスはプライセンにのみ関税を高くしている。
だが彼の家系は元を辿ればプライセンである。
数千年前、プライセン人が大移動をし大陸中に行き渡った時アルザスに辿り着いた人々の祖先を持つ。なので彼の目にはプライセン人特有の金色の目がある。
「皮肉なものだ、私の祖先がプライセン人であり、私は今そのプライセン人を非難している。」
「首相、人間とはそういうものです。我がアルザスも、今も人外種を束ねて統治しているのですから。」
「それとこれは違う!我々は同じ人間だ!あのような野蛮な奴らとは違って知性があるのだ!」
「…そのお言葉、公では出さぬように。」
アルザスは数百のスパイをプライセンへ送り込んだ。
情報局に日々最新の情報が送り込まれるが、その中に奇妙な情報があった。
「プライセンが人体実験を?」
「はい…情報によれば、地下施設でメレンゲと名乗る男が人外種や共産主義者・犯罪者を使って実験を行っているようです。」
「ふむ…奴らに最新の情報や発見を独占されてはならんな。プライセン大使館員をよんで脅させろ。」
プライセンは当初、実験の存在を否定していた。
だがアルザスは、情報を開示しなければリーグレとブリヤートと共にプライセンを侵攻すると脅した。それにより、人体実験の内容が目論見に出たのである。
「…すぐに囚人を使って実験を開始しろ。これが真実だというのなら、世界の軍事バランスはまたプライセンに覆される!」
______________________
プライセン エドゥアルト研究所
研究所とは表の顔。此処は政府の所有する実験所だ。
政府は国中から有力な研究者を寄せ集め、科学の叡智を極めさせていた。
その中の一つが、再軍力作戦である。
エドゥアルト研究所所長 メレンゲ・ハイツ
「例のプロジェクトはどこまで進んだ?」
「最悪です。あれから出来る研究は全て行いましたが…フェーズ2以降へのステップはふめません。」
「逆に、B計画は順調です。後はDNAとの組み合わせに成功すれば…」
「…B計画は一時中断しろ、総統の指示を待つ。それよりA計画だ。新薬の開発に成功しても、被験者が変わらなければ意味がない。」
「それについてですが、外人種では効果が薄いものの人間には効果があります。現に一名、成功段階に近いものが…」
「被験者の名は。」
「…京香・フォン・フォルシェです。」
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