第六話 二度目の長いナイフの夜

大統領からの最後通告について、幹部と協議した。


「大統領や国防軍は、総統がレヌを処罰しないから痺れを切らしたのでしょう。」


「しかし…レヌをやるのは…」


そこへ、ゲルウスとムヒラーがこう言った。


「総統、彼らが反乱を企てている証拠です。元PPの証言もあります。」


「早くしなくてはこちらが危険です。」


数分の後、ヒトラーは決断した。


「わかった…ムヒラーはEPを率いて全てのPP隊員を排除せよ。レヌの元へは私が行く。」


レヌの滞在先のホテル


レヌが寝ていると、EP隊員が部屋に押しかけて拘束した。


「なんだ…一体なんの騒ぎだ!」


「総統は御決心なさられた。」


「…そうか。そうかよ。俺を殺すか!ならばアドルフの手でやれ!」


EP隊員はヒトラーを連れて来させ、会話させることなくレヌを消した。

こうして14年間手を携えてきた友人は、殺されてしまった。


ベルランでは、ゲルウスとムヒラーが自分達に都合の悪い人間達をPP幹部と共に消していった。


ヒトラーがベルランに帰ると、ヒューゲンが近寄ってきた。


「総統、これだけやりました。」


シュテツィンガー・前首相シュナイゼナウ・カール…ヒトラーにとって都合の悪い者のリストがあった


「ざっと1,000人はやりましたから、これで仕事が楽になりますよ。」


旧友レヌの死と引き換えに国防軍の兵士は皆ヒトラー個人に忠誠を誓った。しかしこの中には、薔薇騎馬隊などの女性限定の隊もおり、彼女らなどの一部は余り好意的ではなかった。


2034年8月2日、テュネス大統領は87歳の生涯を終えた。ヒトラーは国民投票を行い、プライセン元首に推挙され、首相と大統領を兼任。かつての地位、総統閣下へ舞い戻った。

プライセンの古都、ヴェールタマンドでは党大会が行われ、「一つの人種・一人の総統・一つの帝国」の、かつてのスローガンが生まれた。


「私には夢がある。それは、この星の全ての土地を手に入れ人間のための、人間だけの大帝国、第二帝国の建設である!私の当面の目標は、大プライセン。つまり全てのプライセン系人間を含む大プライセン国の建設である!」


アルペリアはプライセン人の国だったが、エルウェーウィンが一足先に勢力を伸ばしアルペリア首相にアルペリア・ナッティスを弾圧していた。


我慢できなくなったアルペリア・ナッティスは、アルペリアの首相をクーデターを起こし、暗殺してしまった。


激怒したエルウェーウィンは、4個師団をアルペリアに進軍させた。

「我々はアルペリアの防衛援助に惜しまない。プライセンがうかうか手出しをしたら酷い目に遭うぞ。」


クーデターはあっさり鎮圧され、首謀者は絞首刑になった。


「まずいことになったなあ。悪いが今度の事件は我々とは関係ないことにしよう。パナペティン、親善大使としてアルペリアに行ってくれ。」


「はい。」


「生存権獲得には力による旅しかない。今は軍備を増強しよう。」


2035年、ヒトラーは列国に向かって再軍備宣言をした。これはジェントルマン条約に対する挑戦だった。


彼は各地域を視察し、魔法文明の更なる発展と重工業産業などの化学文明を発展させるように各支部に伝達させた。これによって、銃器機や航空機などが瞬く間に生まれ、かつての第三帝国に並ぶようにしてみせた。


「我々カタリカ・アルザス・リーグレはジェントルマン条約の侵害に対しあらゆる手段を持って対抗する!我々はカタリカに古代ルーン帝国の栄光を取り戻すのだ!我々は断固としてアヌンナキ大陸を占領する!カタリカは強いのだ!」


“エルウェーウィン首相、万歳!!!”


エルウェーウィンはヒトラーと違い、異人種の廃絶は行っていなかった。なぜなら、彼の妻と愛人がエルフだったためである。そのことから、ヒトラーは当初、エルウェーウィンのことが嫌いだった。


カタリカはアヌンナキ大陸を侵略、これは国家共同体連盟憲章違反なのにアルザスとリーグレはカタリカに抗議しただけだった。これを見たヒトラーはジェントルマン条約で非武装化された地帯に軍隊を進めた。だが連盟は動かず、賭けは成功した。


この頃ヒトラーとエルウェーウィンは、共にダンティッシュのファルフィンを助けて、プライセン=カタリカ協定を結んでいた。エルウェーウィンは2037年の九月、国境を超えて第二帝国へやってきた。


「ヒトラーさん。ファシズムの国家が友邦を持つ時はその友邦と最後まで行動を共にしますよ。アルペリアなんか今やどうでもいいんだ。」


「首相の友情を忘れませんよ。」


「この団結をより強固にするべく、鳴神と手をむすび三大国防共協定を結びましょう。」


「全く同感です。」


護衛のなくなったアルペリア政府はなす術なく、無血開城となった。2038年、ヒトラーはついにプライセン人の故郷アルペリアに錦を飾った。十万人以上の人間が街頭に出て、ヒトラーの名を叫び、プライセンの旗を振った。


人々がハイル・ヒトラーを叫ぶ中、彼は車から演説を行った。


「神は選ばれた、かつての故郷を共にさせようと。私は大きな使命を授かったのです。そしてその使命とは、プライセンの故郷を復帰させることを置いて他はない。私はその使命のために生き、戦った。私は全てのプライセン人が自信を持って故郷に住むことができるようになると信じています。」


プライセンはアルペリアを併合し、チェスを食べるような形になった。


次の獲物はチェスチャーカスタヴァ。ヒトラーは、チェスを喰らう「ボード作戦」に取り掛かった。

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