第五話 ヒトラー首相、万歳!

「私も出ていく…!」


その声を聞いた幹部達は、大急ぎで話し合った。


「協議の結果、シュテツィンガーと仲直りすべき。というのが我々の意見です。」


「では、仲直りをしよう。」


使者をシュテツィンガーの元へ出したが、すでに彼はカタリカに出かけた後であった。


翌日になり、シュテツィンガー派の人々は困ってしまった


ヒトラーは元気を取り戻し、反撃に出た。


「これはシュテツィンガーの罷免宣言書だ。みんな署名を。」


ヒトラー派の多くが署名し、反ヒトラー派の人々も渋々書いた。


「ヴェーダー君は?」


「私はシュテツィンガー氏の意見に…」


「これに名前を書くか出ていくかだ!」


「今すぐ書きます!」


午後にはカイザーにナッティスの幹部が集まった。ヒトラーは壇上にて…


「僕は今まで、どれほどシュテツィンガーの我儘を我慢しただろうか。しかし、あいつは俺のことを裏切った。そんな奴だとは思わなかった…」


ヒトラーが時々悔し紛れに凄まじい涙を流すと、そこにいたものの殆どは涙を流した。


「このままでは、党は分裂する。党を更に強固なものとするべく全国の地方幹部やPP隊員に会い、直接話し合うことにする。」


ヒトラーはプライセンの国境沿いの村にまで視察に向かった。


「党のみんなと握手がしたい、忠誠を誓ってくれ。」


ヒトラーは時折聞こえる野次に耐えながら、一人一人と握手をした。


しかしながら、党内の士気は上がらない一方だった。財政的にも疲弊し、多くのものは最早この党は限界だと言った。しかし、陰謀家のシュナイゼナウに首相の座を追われた前首相のパナペティンも同じだった。パナペティンは首相の座に戻るために、ヒトラーは大統領の信頼を得るために、二人は銀行家シュレーダの仲介で会うことになった。


「初めまして。ヒトラーさん。」


「こちらこそ、パナペティンさん。」


「議会で過半数を獲得するには、国家魔法党と連立内閣を作るしか方法がありません。」


「もちろん首相は私ですな。」


「いや、それは私にやらせてほしい。」


「そ、それは困ります。前首相が大臣なんかに。」


「まあまあ、とにかく連立内閣はこれで確実ですね。連立内閣によって我々企業家の救済法案を可決してくだされば資金をお出しします。」


「それはお約束いたしましょう。」


「これでシュナイゼナウの共産党を省く連立内閣作成は失敗というわけか。」


1月22日。ヒトラーは大統領の息子に会い、会合にて息子を味方につけた。


「パナペティンさん。大統領のご子息も私に賛成してくれた。」


「仕方ない。副首相になって貴方を支えましょう。」


一方、陰謀家のシュナイゼナウ将軍は雲行きが怪しくなったため、強硬手段に出ようとした。


「大統領。政権維持のため軍部独裁政権の樹立の御承認を…」


「国民の支持ではない。却下だ。」


1月28日、シュナイゼナウは首相を辞任した。

しかし大統領はヒトラーを首相に任命するのを躊躇っていた


「大統領閣下!大変です、軍部がクーデターの用意をしていると!」


「仕方ない…ヒトラーを首相にしよう。革命が起きた後では遅い。」


ヒトラーはPPに警戒体制を取らせた。


こうして2033年1月30日。かつてドイツで独裁者となったヒトラーは、再びプライセンにて首相となった。


「ナッティスからはヒューゲンが国務大臣に、エカルテが内務大臣になっただけだ。他にもナッティスではない党の閣僚はいる。奴が首相になったからって何も驚くことはない。」


しかしその数日後、帝国議事堂が火事で全焼した。

これはヒューゲンがPPに命令して放火させたものだった。


「共産党の犯罪だ!」


こうして、共産党は全党員が逮捕され議員ですらも逮捕された。そうして資本家たちから金を得たナッティスは大体的な宣言を開始した。


「プライセンの国民よ、我々に4年間の歳月を与えたまえ。然るのち、我々を批判せよ。」


こうしてナッティスは総選挙で288の議席を獲得。国家魔法党の票を入れ、過半数に達した。ヒトラーは国民革命の終了を宣言した。


2033年3月21日、帝国劇場で開かれた国会で彼は全権委任法案採決についての演説を行った。


「みなさん、この法案は有事の際しか適用されません。しかし、有事の際など起こり得ないのです。」


これに対し、社会民主党は反対演説を行った。


「我々社会民主党はこの採決反対を申し出る…人道と正義の原則。自由と社会主義の原則を堅持いたします。いかなることがあろうとも…自由を彼らの手によって破壊させてはいけません…」


「お前らの意見は求めていない!」


賛成441、反対94で委任法案は可決した。こうして、ヒトラーは異世界においても首相の座を手に入れた。彼はすぐさま、結社の自由を撤回しナッティス以外の全ての政党を禁止し、帝国時代以来の中央集権制を確立させた。


「私はここに、新たなる扉を開ける宣言をする。ここに全ての人間種は国家社会主義の旗の下、一体化をする。」


隣国にはこう叫んだ。


「かつてこの国が戦争で敗れ、我々に不利な条約。ジェントルマン条約において、我が国の軍備の縮小を規定させたのは、これからは魔法ではなく科学を用いて世界を発展させるという前提であった。なのに奴らは少しもそんな素振りを見せないばかりか、帰って魔法研究を大体的に行っている。ならば我々も当然軍備の平等権を要求し、魔法と科学の二つを持ってもおかしくはない。」


これに対し各隣国は、非難声明を行った。ヒトラーは遠い離れた異国の島国、鳴神のマネをして隣国との交易を絶った。その夜、ベルランの街は松明で埋まった。


その頃、PPは300万の大軍隊となり、ヒトラーの革命終了には満足ではなかった。


「これから第二革命を始めるんだ!」


「なんだ、せっかく俺たちが異種人族どもと戦ってきたからいまがあるんだ!」


「レヌの親父は報われてないじゃないか!」


「そうだ…革命はこれからだ。騎馬隊や近衛兵らを追い出すまではな…」


そこへ、レヌがやってきた


「アドルフはゲス野郎だ。あいつは俺たちを裏切った。奴は資本家どもと手を切らない。だから古い友は気を悪くしている。」


「最近は党員よりも金持ちどもにヘコヘコしてやがる。」


「そうだ。俺があいつに軍隊を教えてやったんだ。」


その頃、ムヒラーはPPの中からより優れた兵隊たちでEP「精鋭護衛隊」を作り、その指揮を取っていた。


「EPは量より質を選ぶ。PPのような野蛮人ではない。」


その頃ヒューゲンは特攻警察「スーサイドスクエア」を創設し、ムヒラーと共にレヌに対抗していた。


「PPの中から警官になりたいものは申し出ても良い。」


そこへレヌが怒鳴り込んできた。


「PPは俺が育てた子供たちだ。お前らにはやらん!」


2034年4月20日、ムヒラーがスーサイドスクエアの指揮官となるとムヒラーとレヌの仲が悪くなった。


「アドルフの奴め…何を考えてる?」


ヒトラーとしては、PPも持っていたかったが今やPPは消したい存在となっていた。


「強い軍隊を持つなら、やはり帝国時代から伝統ある国防軍でなければ…」


ヒトラーは、レヌを国防長官に任命した。するとレヌは国防軍はPPに接収すると言い出し、国防大臣と喧嘩した。

やがてテュネス大統領の容体が悪化し、次期大統領にヒトラーの名が上がった。

軍部は「PPを処分するならば、ヒトラーを後継者にする」といった。そこでヒトラーは、レヌと会談した。


「お前はいつも第二革命というが今はそんなことではないことぐらいわかっているだろう?俺が大統領になれるかこれで決まるんだ。それにお前はPPを放置しすぎだ、苦情が来ている。いやしくも一国の大臣が優柔不断でいてたまるか。」


「お前、首相になってから変わったな。俺と一緒に埃まみれになって奮闘したあの日々を忘れたのかよ。そんな高級服きやがって。権力を思うがまま使うお前、俺は嫌いだね。お前がヒューゲンや金持ちの奴らと仲良くするのが悪い。俺は軍人。お前は首相。軍隊は俺に任せろ。」


「とにかくこれ以上PPの評判を悪くするな。東プライセンのバースト・ミンスターにでも行って休んでいたらいいんだ。」


ちょうどその頃、副首相だったパナペティンがとんでもない演説を行った。


「ナッティスの恐怖政治、廃止。正義な道義の回復。ある程度の自由。特に言論・出版の自由。」


このことは国中に宣伝された。


その頃ヒトラーはカタリカに出来た国家社会主義政権の指導者、エルウェーウィンに会った。エルウェーウィンは、ヒトラーよりも沢山の勲章や称号を持っており、ヒトラーにとっては妬ましい第一印象となった。


「アルペリアはカタリカが守る。君は自国のことを懸念しろ。」


ヒトラーは苛立った騒ぎで、国に帰るとこの騒ぎだった。


「パナペティンくん。君の演説は禁止する。」


「後輩大臣によってかかることをされては我慢ならん。このことは直ちにテュネス大統領に進言する。」


「おいパナペティンくん、ちょっと待ちたまえよ。」


パナペティンが進言することは結局なかった、だがヒトラーにとっては深く考えることになった。


「困ったことになったなあ。」


「PPの暴行問題も国中の評判を悪くしています。」


そこへ、ヴェーダーが大慌てでやってきた


「総統、いよいよレヌが反乱を企てています。」


「反乱!?」


そこへ、ノアが来た。


「総統、大統領が至急のお呼び出しです。」


「何?わかった。」


大統領府に着くと、国防相のいつもの彼に対する従僕な態度はなかった。


「総理がつきました。」


「ああ、ヒトラーくん。そこで待ちたまえ。今大統領の発言がある。」


「現在のプライセンの緊張状態が速やかに収集されないなら、私は戒厳令を敷き国の支配権を国防軍へ渡す!」


「はぁ…」


大統領の最後通告だ。国防軍が政権を握れば何もかもおしまいである!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る