第二章 権力掌握編

第一話 バイル革命

「3人のうち誰一人帰ってきていない時点で、最早逃げられたと考えた方がいい。」


「では使者を出して彼らを呼び戻したまえ。」


「しかし最高司令官。もう何度も彼らの元へ使者を送っております。ですがその内一人も帰ってきません。最早何をしても無駄です。」


最高副司令官 キール・ゼアール

「最高司令官の意志に反論を唱えることは許さない。」


「は、はぁ…」


「もういい。それよりレヌはどうした。」


「レヌ達は軍の司令部へ向かっています。各支部も間も無く合流する頃合いでしょう。」


だがレヌたちが軍の司令部に突撃した時、すでに周りは包囲されておりあっけなく捕まってしまった。

その頃、ミュー連隊長は国防省の命令で反乱を弾圧しようとしていた。そこへエマヌエル氏が転がり込んできた


「いてて…今逃げてきたぞ。」


「あっ、将軍。そのお怪我は? 早く治療を!」


「そんなものはどうでもいい。俺はヒトラーに軍人としての名誉を傷つけられた。」


「名誉を傷つけられた?」


「頭に銃を突きつけられたんだ。」


「それはひどい。プライセンの将軍に銃を突きつけたやつは誰であろうと剣で貫かれるのが建国以来の掟です。」


「そうだな。だが今はそんなことをしている場合じゃない。今は反乱が起こってるんだ!レヌが占領している軍の司令部を直ちに包囲しろ!」



その頃、州知事カールは逃げ出すと早速ミュー市内の至る所にビラをまいた


《野望を抱く一部人間の裏切りによって、国民の目覚めのための集会は憎むべき暴力の集会にすり替えられた。宣告無理やり結ばれた条項は全て無効である。直ちに国家社会主義プライセン労働者党の解散を命ずる》


ヒトラー達は焦った。このままではこれまでの努力が無駄に終わり、捉えられるからである。


「こうなっては一旦ミューから退却して武装団体の数を増やし、ミューへ攻撃を仕掛けるしか方法がないでしょう。」


「ヒトラー君、人間同士が血を流すことは絶対に許されない。プライセン将兵はもとよりプライセンの大部分は元軍人である。我々が手を携えて市の中心部を行進しそしてこれを占領すれば誰もこれを止めるものはいない。」


「かつて東西両戦線でかくかくたる勲章を授けられた最高司令官に発砲するものは誰もいないでしょう。」


「そうすれば人間同士で血を流さずに済むし、革命は達成できる。」


「いや、むしろ警官も貴方に屈し命令に従おうとするでしょう。」


「そうかもしれません…いや、それしか我々に残された道はないでしょう。」


そのあくる日

共和国暦1923年11月9日 かつてのプライセン皇帝を失脚させプライセン共和国を建てることになった五回目の記念日…ヒトラーとルーデンベルグは三千の突撃隊の先頭に立ちミュー中心部へ向かった。

後方には機関銃を積んだトラックが一台続いていた


ヒトラーたちの前にまず武装警官の一隊が現れた


「君たちは我々を武力を使ってでも止める気だろう。しかしそうすれば、我々の後方にいる君たちの最高司令官を射殺するぞ。」


警官隊はヒューゲンの言葉を信じて、黙って通した。

人質は夜の間にヘル達が不足の事態に備えて捕らえていた。中には国務大臣も二人ほどいた。


正午過ぎ、行進目標だった軍司令部の近くまできた。軍司令部ではレヌ達が共和国の軍隊に包囲されていたが、どちらも発砲はしてなかった。


「最高司令官。このまま向かいましょう。彼らを救わなくては。」


しかし司令部を中心とした半径100メートル内は何人もの武装警官隊が待っていた


「撃つな!!!最高司令官がおいでになっている!!!」


「警官隊諸君!!!降伏したまえ!!! 降伏するんだ!!!」


とその時、突撃隊の一人が警官隊へ向かって発砲した。


「バカものーっ!!!」


「撃つな!!!撃つな!!! グァっ!」


「撃つなと言ったのに!!馬鹿野郎!!!」


警官隊とヒトラーたちが殴り合いを続ける中、ルーデンベルグとキールの二名だけが軍司令部へ辿り着いた。しかし待っていたのは、名誉ではなかった。


「ルーデンベルグ最高司令官、キール副司令官。逮捕します。」


「逮捕!? 諸君らは私が誰かわからんのか!このプライセン共和国軍最高司令官、オットー・フォン・ルーデンベルグであるぞ!よかろう!好きにするが良い。だが私は、今後二度と軍服を着ないし、国のために忠義も尽くさぬ!」


なんとか警察隊から逃げ切ったヒトラーは、とある党員の持つ別荘で怪我の治療を受けていた…


「ヒューゲンは胃に重症をうけて隣国のアルペリアに逃げたらしいです。」


「レヌは?」


「彼は司令部で降伏しました。」


「そうか…」


すると玄関がノックされ、警官隊が入ってきた。


革命は失敗に終わり、NSP(国家社会主義プライセン労働者党)は解散させられ世間の信用を失いヒトラーは滅びたかのように見えたが、法廷にて彼は巧みな論述を用いて、敗訴を勝訴へ変えた。その雄弁と愛国主義がプライセン国民を感銘させ、次の日の新聞に彼の顔と名前がでかでかと乗った。


ヒトラーは郊外にある、古びた廃城の地下室へ監禁された。

しかしこの時、ヒトラーはノアを呼び出しかつて自分が執筆した【我が闘争】を口頭で伝えて書かせた。


「ノア君、私はこの本に全てを書き込むつもりだ。勿論、我が人生の全てを。」


「はい。わかりました。」


ヒトラーは再び、監獄の中で我が闘争を作り出した。

彼の政治家としての全てが、また形あるものへとなったのである。

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