第16話 夜会
それから昼食を食べてから、アンナが話したのは幼いときに母から聞いた話を聞いた。
しかし、それはローマン帝国が建国したときから伝わっているものなので、国民は知っているおとぎ話に近い内容だった。
ある皇帝には双子の御子がいた。
一人には浄化型魔法の性質があり、善良な人生を歩むことになった。
もう一人は破滅型魔法の性質があり、恐ろしい魔法で人々を殺めていた。
しかし、恐ろしいと言われた御子は最後に呪いながら死んでいったということだ。
それから皇帝の家系は八百年に一度の周期で双子が生まれた場合、片割れには破滅型の魔法を持つとわかった際は死産として公表されていた。
「それって皇帝の直系の血筋を引いてないとないの? 傍系は」
「うん。それも記載されていて、皇族はそれを恐れています。少なくとも」
それを聞いて八百年周期に生まれた御子はいまから四十二年前であることを聞いた。
クラレンスは少しだけ驚いてしまったのと同時に偶然があまりにも重なりすぎていることに気づいた。
「少し席を外しますね。お三方」
「わかった。クラレンスおじ様」
「行ってらっしゃい」
耳に澄んだ音楽が聞こえてきて、すぐにピアスに触れると同時に盗聴防止の結界を行った。
[もしもし、クラレンスか?]
「あ、おはようございます。お忙しい時間に
[いいんだよ。甥っ子の願いだ。
「ええ。きちんとお守りして……必ず連れて行きます」
[頼んだ]
通話の相手は伯父のフェラーリ公爵でおそらく連絡してすぐに返事が来たようだった。
まだ信じられないようで幼くして行方不明になっていた孫娘が発見されたらなおさらだ。
その後に、クラレンスが思い出すように喫煙所へ向かうと煙草を吹かす。
思い出したのは
幸せそうでお互いに笑みを浮かべて話し合っているのが印象に残っている。
その笑顔がいまのアンナにそっくりだったのを思い出していたのだ。
しかし、それからクーデターが起きてからは彼の性格は正反対に変わってしまった。
(彼女には必ず皇帝の座に座ることになる。絶対に守らないといけない)
そう言いながら手帳から一つの絵を見て、ため息をついていた。
それには十代半ばのクラレンスと幼い男の子がこちらを向いて笑みを浮かべている。
二人とも銀髪に紫系統の瞳をしていて、男の子はとても満面の笑みで見ている。
「リック。絶対に見つけて見せる」
絵に描かれているのは自分と十二歳離れた弟のリチャードだったが、三十年前にローマン帝国で行方が分からなくなっているのだ。
それから外交官として働き始めて帝国にやってくるたびにリチャードの消息についてを聴いたりしている。
あきらめてもいいのだが、戸籍には未だに行方不明になっている弟の名前が書かれている。
彼が生きていればおそらく年齢は三十代だが、面影が残っているのかわからない。
弟に会える日を待っているが、それがかなり先になると考えている。
◇◇◇
夜の帳が下りてから船では舞踏会が行われていた。
それは二等船室以上の乗客が一堂に会するもので、『海原の間』という一番広さのある部屋に通されていた。
隣で女性陣が準備している間にグレイヴ伯爵のリボンを借りて、彼はすぐに髪を結っていたのだ。
アレクサンダーは貴族、ルイーズは騎士の礼装に身を包んでいる。
彼らは相談をして髪色を黒くして
「俺たちはスタンフォード伯爵家の遠縁の家柄の息子だ。適当にごまかしておけば問題はない」
「スタンフォード伯爵家って?」
「俺の母方の実家だ。意外とそちらの方が良いだろう」
それを話しながらグレイヴ伯爵も似たような服装をし、アンナは青の上品な衣装を身に包んでいるのだ。
それをエスコートするのがルイーズの役割であり、アレクサンダーはグランドツアーで伯爵と共に旅をしているというものだった。
「ルイーズ様。大丈夫でしょうか」
「アンナ、敬語はやめてね。わたしが敬称を使うから、良いね?」
「わかった。ルイ」
「アンナお嬢様、一緒に行きましょう」
それから共に『
客船の最上階に繋がるエレベーターには誰にも会わずに乗ることができたので、直通のエレベーターだったので正体が気づかれることがなかった。
アンナの服装は成人前の令嬢が着るような姿でとても緊張しているような姿を見ている。
「ルイ、次の階ね」
「ええ……そうですね。ダンスはあまり踊れない」
「大丈夫です。エスコートします」
それを聞いてからアンナも安心したようにうなずいている。
アレクサンダーはグレイヴ伯爵のそばを歩くことにしているが、ほとんど変装していないからかなり緊張しているようだ。
「アレックス殿下」
「殿下はいらない」
「かしこまりました。アレックス様」
「クラレンス卿、ありがとうございます」
それからアレクサンダーは深呼吸をしてからエレベーターを降りてから、グレイヴ伯爵と共に部屋に入ると
音楽については各国の流行が大きく反映されているが、帝国は華やかなで踊ってしまうような曲調があるのだ。
そのときに伯爵に声を掛けたのはエリン王国から来ている貴族の一人、確か商業都市に領地を持っている者だったはずだ。
「グレイヴ伯爵、こんなところにいたのですね。ご旅行ですか?」
「ええ、こちらは?」
「初めまして、ノエル・ハリー・コールマンと申します」
「コールマン家は確かスタンフォード伯爵家の」
「はい。グランドツアーのために閣下が帯同してくださっているのです。それとあちらにいるのが弟のルイです。今日は私とクラレンス卿のお嬢様の護衛に」
「そうでしたか。それではまたどこかで」
そのなかでざわめきのなかで壇上には貴賓席があるのだが、そこには子ども用の椅子と大人用の椅子が置かれてある。
人ごみの合間にはルイーズとアンナが
(俺は踊ることは勇気がない)
二人の姿を見守りながら一度歩き伯爵のそばを離れることなく歩き始めている。
アレクサンダーは部屋の壁のそばにいるが、そのときに舞踏会が始まる前に皇族の方がこちらへやってきたのが見えた。
「フェリシアナ第四側妃殿下、セバスティアーノ第二
そのような声が聞こえて、どよめきが起きてそれぞれ礼をしているのが見えた。
その壇上にはてを引かれて歩いてくる皇子の姿がこちらに見えていたのだった。
くせ毛の赤毛に淡い緑色の瞳をしているが、まだ自分の立場について全く理解できていない表情をしている。
それからフェリシアナ妃はおそらく難しいことが見えたりしているような気がしているようだ。
彼女はおそらく怖いと考えていることが見えたりしているようだったが、丁寧に見たりしていることがわかるようだ。
アレクサンダーは壇上から背を向けて飲み物をもらったときだった。
「あのお相手を」
「え、ああ。ダンスですね。ノエル・コールマンです」
「はい。私はフローレンス・フィッツジェラルドと申します」
声を掛けられたのは淡い茶色の髪を結い上げた女性で、年齢は少し年上のような気がした。
共にフロアの中央寄りにアレクサンダーの女性は歩き始めて、一曲が終わってから再び次の曲へ移るときに入れ替わりで踊り始めたのだ。
フローレンスは笑顔でアレクサンダーと共に笑顔で話しながら踊っていた。
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