怖くて怖くて
ある日のこと。
夕方になるといつものようにあの男たちが来た。そこまでは昨日と同じだった。
でも、いつもとは様子が違った。とてつもなく機嫌が悪かったのだ。
荒々しい音と共に部屋に入ってくると。乱暴にラルムの髪を掴んだ。
「お前が居なければ!」
どうやら娼館に毎日通っているのが上司にばれたというのだ。
ただの娼館になら他の人も行っている。でもここは特殊な、と言うより違法な娼館だった。
男たちは騎士だったらしく、違法娼館に通っていることがばれクビになったらしい。
でもそれはラルムがいてもいなくても同じことだ。流石にそれはないと思い少し反論した。
「で、でもそれって僕のせいじゃ…」
小さな声で呟いたつもりだった。でもいつもより気が立っている男たちにははっきりと聞こえた。
「#shut up__黙れ__#!」
男たち全員が強いglareを出す。あまりの衝撃に身体がカタカタと震える。
「っ、は、は、」
「#crawl__這いつくばれ__#」
カクンと体の力が抜ける。
そこからはいつもと同じ、いやいつもよりも激しい一方的な蹂躙だった。
クビになった鬱憤を晴らすかのように腰を打ちつけられる。
「うっ、いたっ、あっ」
休憩もなく抱き続けられる。
やっと全員終わったと思っていたら、強いglareと共に罵られた。
「おまえ本当にキショい。その髪も目も、相手してやってる俺らに感謝しろ!」
「ほんとそれ!人形みたいでキモい。生きてる価値ないわ」
glareを出しながら言われた言葉はいつもよりひどい。それに永遠と言われ続けたのだ。
生きてる価値ない…死ね…消えろ…
言われた言葉が頭の中でぐるぐる回る。視界が暗くなり身体ががたがた震える。
男たちが出ていったことにも気が付かなかった。
存在価値ない…死ね…きもい…
やっと客がいないことに気づき、なんとか部屋から這い出す。
いつもはこのまま自室に戻るが今日はあの狭い部屋にいたら余計悪化しそうだった。
何とか壁を伝って歩き裏の扉から外に出る。
その間も頭の中でさっきの言葉が渦巻いている。
ふらふら路地裏を歩き突き当たりで座り込んだ。
死ね…消えろ…まだ生きてるの?
今の季節は真冬。王都に雪は降らないものの下の石畳はとても冷たい。
でもそれが今は心地よささえ感じさせた。
ひんやりとした空気がラルムの身体を冷やす。
どんどん体温が下がり視界も暗くなる。背後には壁しかないのに、何かが迫ってくる気がする。
寒さだけではない震えが止まらない。
死ね…死ね…消えろ…
ずぶずぶと何かに飲み込まれそうになる。
必死で抗っても身体が飲み込まれ続ける。怖い…暗い…怖い怖いこわい…。
でもふと思った。抗って何になるんだろう。死んでも悲しんでくれる人などいないのに。
そう思った瞬間全てがどうでも良くなった。暗くて寂しくて怖い場所にどんどん引き込まれていく。
ふっと身体の力を抜き完全に呑まれそうになった時、一筋の光が差した気がした。
「おい、大丈夫か?おい!…くそ戻ってこない、おい!…」
でもそれもすぐに分からなくなり、暗闇に呑まれ気を失った。
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