地獄の始まり

そこからが地獄だった。


定期的に来るあの男からなんでもするsubがいると噂が広がり、特殊な性癖の人ばかりが来た。


ある時は鞭打ちが好きな人が来た。


手加減なしに叩かれ続けて背中がみみず腫れになった。痛くてしばらくは寝返りが出来なかった。


ある時は寒さに震えるsubを見るのが好きな貴族が来た。


魔法で部屋を寒くした後に#strip__ぬげ__#と言われた。寒くて寒くて手足の感覚がなくなったところでやっと解放された。次の日は熱が出たが構わず客を入れられた。


ある時は呼吸管理が好きな人が来た。


コマンドで呼吸を制限されて、本気で死ぬかと思った。意識が朦朧としてきた所で解放され気を失った。


ある時はまたあの男達が来た。


そしてまたニヤニヤしながら言った。


「お前趣味悪いな~。変な客しか取ってないらしいじゃん」


思わずカッとして叫んだ。


「なんで、、噂してるのあなた達ですよね!僕のこと嫌いなら構わないでください…!」


「は?相手してやってんのに何その態度?」


その後は暴力の嵐だった。手加減なしで殴る蹴る叩く。


「生きてる価値ないのに生きれてんの俺らが払ってる金だけど?」


「や、いたっ…いたい…っ」


「サンドバッグにもならねーなお前」


「ごめ、なさい…っい…うぅ…」


嘲笑と共に浴びせかけられる言葉の数々に心臓の辺りが締め付けられた。glareを出されなかったのがせめてもの救いだった。



意識が戻った時には部屋の中で寝ていた。


初めてのdropでケアをしてくれたdomが来て怪我が治るまで客をとるなと言った。


正直なところ心身共に限界を迎えそうで焦っていたからとてもありがたかった。



1日休んだところで少し心の余裕が出来、周りのキャストのsubが目に入ることが増えた。


ある時1人のsubが乱暴にコンテナとは名ばかりの箱に入れられ連れて行かれるのを見た。


その時は別の娼館にでも行くのかな?くらいに思っていた。



しかし次の日朝食を食べようと部屋から出た時、あのdomの声が聞こえてきた。


どうやら別のdomと話しているようだ。


「昨日またdropして使えなくなったやつが捨てられてったわ。まじ使えね~」


「マジでランク低いsubはここに来るなよな。」


どうやら昨日のsubは捨てられる為に箱に入れられていたというのだ。


自分もいつかはそうなるのかもしれないと思い身体が震えた時、自分の名前が話題に上がっていることに気づいた。


「それに比べてあいつ…ラルムだっけ?…そいつ使い勝手がいいよな。なんでもめっちゃランク高いとか」


「でも見た目はキモいし正直ランク低かったら使い捨てだわ」


小さい頃は大好きだった自分の髪色が気持ち悪いと言われ悲しくなる。


でもそれよりも他のランクの低いsubに申し訳なく思った。ランクは自分が望んでなんとかなることではないから。


そっとバレないように部屋の前を通り過ぎ、食堂に行った。


さっきの話が気になり周りを見回してみたら目が暗く濁っているsubが何人かいた。


今は少しだけ余裕がある自分がなんとかしてあげたいと思った。

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