余裕があるなら
朝食堂で見かけた中でも1番目が暗く怯えたような顔をしている子とすれ違った。
よろよろと歩きながら自室に向かっている。ふと立ち止まったと思ったらその子が後ろにふわりと倒れそうになった。
慌てて背中を抱きとめ話しかける。
「大丈夫?具合悪いの?部屋まで連れてくからどこか教えて。」
その子は誰かに助けてもらったことなどなかったから驚いて目を見開いた。
「えと、大丈夫です。自分で戻ります…。」
「大丈夫じゃないから倒れてるんでしょ!教えて。」
ラルムが少しきつめに言うと途端に身体がビクッとして震える。
「え、と、2階の3番です。」
「隣だ…!僕、4番のラルムっていうんだ。よろしく。」
「……エルです…。」
部屋まで連れて行きエルをベッドに寝かせる。そして頭を優しく撫でて自分の怪我だらけのお腹を見せて言った。
「僕、この怪我が治るまでお休みだからその間エルの看病する。」
「え、いや…ありがとうございます。」
最初は断ろうとしていたが、ラルムの目に自分と同じ不安が浮かんでいることに気づき了承した。
「っ!ありがとう。」
そしてふわりと微かに微笑みを浮かべた。
「まずは、何があったのか教えて。同じキャストなんだしどんなことでも引かないから。」
そう言って聞き出したことは自分と比べると想像以上に良い待遇だった。
「僕は自分で言うのも変なんですけど、あの、従順で素直を売りにしてて…。いつもはケアとかはしてくれる客ばっかりなんですけど、今日の客はその。僕のこと犯して散々命令したのに最後に一回しか誉めてくれなくて。でもそれだけじゃなくて、最後にお前の後ろの具合最悪だったって言われて。それで落ち込んじゃって…くだらないですよね。」
「…えと、ケアって毎回されるものなの?僕人生で1回しかされた事ないんだけど…」
「え…あの、ラルムさん?のランクってどのくらいですか?」
「えと、なんかすっごく明るくピカって光ったのは覚えてるんだけど…。」
「あの、普通はケアされなかったらすぐにdropします。しないってことはランク相当高いと思います。
……なんだかラルムさんの話が衝撃的すぎて不安が吹っ飛んじゃいました。」
そう言ってエルは苦笑いした。
そこからラルムの怪我が治るまで毎日少しだけ話すようになった。
話題は他愛のないこと。例えば今日のご飯はしょっぱかったとか、従業員の寝癖が酷かったとか。
悪い客に当たったとき、ケアの真似事をすることもあった。
「僕subだから気休めだと思うけど…#goodboy__えらいね__#よく頑張りました。」
「ありがと、ラルム…。」
でもそれもラルムの怪我が治るまでだった。
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