1章
生まれた時から
ラルムの母親はレーヴェリオ王国のdom専用娼館の娼婦だった。父親は誰かも分からない。
離れた土地で生まれ、髪や目の色がラルムと同じく淡い水色で珍しいものだった。
そのために差別され、貧しい暮らしをしていた。
それでもラルムは母親の髪が大好きだった。母はいつも優しく少し寂しそうな笑顔を浮かべていた。
貧しくても幸せに満ちた生活をしていたと思う。
でもそんな日もすぐに終わった。
3歳の頃、かえってきた母を迎えようと思い玄関に向かった。
「おかえりなしゃい。…おかぁしゃん?」
いつものハグとキスがないことに不安になり見上げると知らない男が立っていた。
「だぁれ?」
男は質問に答えることなくラルムを捕まえた。
暴れて逃げようとするも抑え込まれ何かを嗅がされ気を失ったあとに袋に詰め込まれ連れ出された。
目が覚めたら狭くて暗くて寒い部屋にいた。
1日目は怖くて寂しくて泣き叫んでいた。でもすぐに空腹と寒さでそんな気力もなくなった。
それからずっとそこで暮らしていた。1日2回配られる冷たいスープと硬いパンを大事に大事に食べる。
母にいつも食べ物は大事にしなさいと言われていたから。
7歳になったらやっと部屋から出ることができた。
従業員らしき人に連れられ、同じく7歳になった子供達が1つの部屋に集められた。
連れてこられた部屋にいたのは自分のことを捕まえたあの男だった。
そこで聞いたのは驚愕する話だった。
ここはレーヴェリオの娼婦男娼養育所のひとつだということ。
特にこの養育所にいるのは事情はあれど親に売られた子供達だということ。
第2性が分かり次第それぞれの娼館に行くこと。またdomの場合は貴族の家で勤められるかもしれないこと。
その選択に拒否権はないこと。
他の7歳の子たちは親に売られたと聞いても平然と聞いていた。
みんなそこは理解していたのだ。
でもラルムには信じられなかった。あんなに優しかった母に売られたことが。
思わず話している男に詰め寄った。
「そんなはずない!お母さんはあんなに優しかった!」
泣きながら叫んでいたら殴られた。
「お前の親はお金欲しさにお前を売ったんだよ!」
そう言われてさらに殴られる。
生まれて初めて受けて暴力に抵抗すら出来なかった。
腹を殴られて吹っ飛び、壁に強打する。
あまりの痛さと衝撃に気を失った。
「したくてこんな事しているわけじゃない…」
男がそんなことを言ったとは知らずに。
その後3日間ほど寝込んだ。寒くてでも熱くて震えていたら部屋に布団が投げ込まれ、温かい食事が出てきた。
なんでこんなに優しくされるのか、幼いなりに疑問を持った。でもすぐに理由がわかった。
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