外ではスリゴロ、家ではシャーパン「リンネ」

 

【猛猫リンネの物語】の主人公リンネは、TNRのつもりで捕獲された猫だった。

 ラリマーメンバーのNKさんが餌付けして2週間ほどでケージ誘導捕獲に成功。

 術前から術後の抗生剤投与期間だけ預かる予定だった。

 ところが、密かに妊娠しており、なんと避妊手術予定日の前日に出産。

 我が家で過ごした2ヶ月間、最初から最後までずっと、リンネは猛獣のように狂暴だった。


 

 ケージから5cm圏内に手を近付けたら、ジャンプからのパンチがくる。

 食器はウサギ用品のケージ固定タイプを付けたままにして、サランラップの芯を差し込んでドライフードをザラザラと入れていた。

 サランラップの芯を噛むのでやがてボロボロになる頃、塩ビパイプと漏斗を組み合わせての給餌に切り替えた。

 掃除のため猫トイレを出し入れする際は、手を入れると噛まれるのでマジックハンド使用。

 荒々しい姿をSNSでUPしていたので、見た人は誰もが猛猫だと思った筈。


 

 なるべく近寄らないように、猛猫アタックを避けるため、いろんな道具を使った。

 仔猫たちは母に似ず穏やかで人懐っこかったので、生後1ヶ月半頃に預かりボラ宅へ移動させた。

 現在の仔猫たちは、民宿の1室貸し切りで生活しながら、のびのびと成長し続けている。


 

 リンネは仔猫と離して単独飼育した2週間、変わらぬパンチを飛ばしていた。

 たっぷり栄養と休養をとらせて出産育児の疲労を回復させた後、TNRの避妊手術を済ませたのは6月24日のこと。

 術後は病院搬送に使ったキャリーごとLケージに入れたら、引きこもって出てこなくなった。


 

 6月30日にリリースしたときは、キャリーに篭ってるところをトングで扉を閉めてLケージから取り出し、車に積み込んで元いた場所まで運んだ。

 このときもしっかりシャーパンだったので、我が家に滞在した期間中パンチしない日は無かったといえる。


 リンネはまだ1歳くらいの若い猫だった。

 元いた場所には、リンネの母や兄弟がいる。

 リリースから1週間が過ぎた7月7日、リンネに仔猫の頃から餌やりしていた方から画像が届いた。

 画像を見て、あまりの変わりように驚く。


 撫でられてる?!


 思わず二度見したよ。

 我が家ではこんな姿は全く見たことがない。

 ずっと威嚇とパンチの日々だったのに。


 

 餌やりさんは動画も見せてくれた。

 うちで暴れ続けた猛猫とは思えないスリゴロっぷり。

 リリース後のリンネはとても穏やかで、餌やりさんにくっついて甘えていた。

 元の場所に帰れた喜びが感じられる。

 それを見たとき、僕はリンネを外へ返して正解だったと確信した。


 

 屋外で暮らす猫たちは短命だ。

 石垣島の野良猫や地域猫の平均寿命は2~3年程度、仔猫は半数以上が大人になる前に死んでいく。

 だけど、リンネのように狂暴化する猫は、TNRして地域猫にするのが一番だ。

 ストレスを感じながら長く生きるよりも、短くても楽しく生きる方がいいと思う。

 リンネにはこの先、望むまま自由に生きてほしい。

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