カラスに襲われていた仔猫「ジロ」

 カラスが仔猫を襲うことはよくある。

 とあるクリーニング工場敷地内にいた仔猫は、カラスにつつかれていたところを従業員に救出された。

 すぐに病院へ連れていってもらえたことは良かったけれど、そのまま保護できる人は社内にいない。

 そこで配送のトラックドライバーが助手席に仔猫を乗せて、相談に来たのはとあるホテルのリネン室。

 当時は個人保護主として活動していた僕に、相談が回ってきた。


「この子、預かってもらえないかな?」


 そう言ってトラックドライバーが見せた仔猫は、仰け反るようにしながら体を震わせていた。

 怖かったり寒かったりして震えているのとは違う感じ。

 直感的に、この子はあまり長くはないと思った。


「預かってもいいけど、生き延びられるかどうか微妙かも」


 そう説明して、仔猫を引き受けた。

 仔猫は箱の中で大人しくしている。

 同僚たちが協力してくれて、交代で見守ってくれた。



 見守りスタッフの1人が、仔猫を「ジロキチ」と呼び始めた。

 いつか猫を飼えるようになったら付ける予定の名前らしい。

 しかしその名は他の人には不評で、別のスタッフが「ジロ」と名付けた。


 ジロは多分、癲癇の持病があったんだろう。

 それで母猫に育児放棄されて、カラスの餌食になりかけたんだと思う。



 ジロは歯が生え揃っていたので、多分生後1ヶ月くらいかな。

 ウエットフードを自力で食べられる年頃だった。

 一度に食べる量は少なく、シリンジでミルクを飲ませたりもした。


 癲癇のような発作は頻繁に起きる。

 交代で世話をしてくれたスタッフの1人が、レイキヒーリングというのを試していた。

 病院にも連れて行き、痩せているので補液もしてもらった。

 生き延びてほしいと誰もが願ったけれど、願い叶わず。


「もう延命措置はしない方がいいよ」


 保護8日目、その頃にはジロは様子を見るといつも痙攣を起こしていた。

 顔を上げることもできず、意識は無い状態。

 点滴をやめた翌日、ジロは目覚めないまま息を引き取った。


 2018年6月10日、保護9日目にジロ永眠。

 その亡骸は、当時まだ出来たばかりのペット霊園の共同墓地に埋葬された。


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