初めて見た優しい世界「アクル」「エルサ」
もしもし?
君、猫背どこへやった?!
って言いたくなるくらい、背筋ピーンとしながら、隣のケージを見つめている仔猫は「アクル」。
彼はとあるホテルの敷地内で生まれ、TNR用のトラップにかかってしまった子。
トラップに捕まった直後、音に驚いて突進したようで、顔面をすりむいていた。
アクルに見つめられているのは、隣のケージにいる「エルサ」。
自治会TNR猫で、リリース後に隣の集落へ移動して、貸別荘の庭に居着いていた猫。
別荘の主がベテラン猫ボラさんに相談、ベテラン猫ボラさんの家に保護され、耳カットがあることからこちらに話が回ってきた。
元は自治会内にあったダイビングショップで餌を貰っていた猫。
その店は野良猫の群れを置き去りに転居していなくなっている。
アクルには「ミモザ」という仮名をつけた姉妹がいる。
ミモザは1回目の譲渡会ですぐ貰われていった。
アクルは残されて寂しかったのか、他の猫に甘えて寄って行こうとするようになった。
最初に寄っていった相手は、人間大好き猫大嫌いのアンナ。
子育て経験ある成猫だけど、よその子には辛辣だった。
甘えて鳴きながら近寄るアクルを、容赦なくパンチするアンナ。
隣接させない方がいいなと思い、アクルのケージを移動させた。
次にお隣さんになったのが、アンナの姉妹のエルサ。
エルサはアクルを見た途端、じっと座って見つめ合った。
その見つめ合いが何を意味するのか、試しにアクルをエルサのケージに入れてみた。
エルサのケージの床にあった爪とぎ板をバリバリし始めるアクル。
この子、気になってたのはそっちか?
一方、エルサはスッとアクルに近付く。
そうして何をするのかと思えば、初対面のアクルの毛づくろいをし始めた。
おとなしく毛づくろいされるアクル。
まるで母子のような光景。
でも、彼らは今初めて会ったばかり。
その優しい世界は今も、ガラケーで撮影した動画で残っている。
更にその夜、保護部屋の様子を見に行くと、アクルがエルサの乳を吸っているのを目撃。
君たち、今日会ったばかりだよね?
なにその今までずっと一緒に暮らしてたみたいな雰囲気は。
親子と間違われそうなくらいに、2匹は初日から仲良く寄り添っていた。
2匹はもう引き離すのが惜しいくらいの仲良しコンビとなり、次の譲渡会では1つのケージに入れて参加させた。
「仲良しなので2匹一緒にお願いします」
石垣島では、ペア譲渡はなかなか声がかからない。
ましてエルサは成猫で、貰い手がつきにくい。
誰からも声がかからないかと思っていたら、若いご夫婦が声をかけてくれた。
「ふたりの仲良しぶりが気に入りました」
そう言ってくれた里親さんは、トライアルを経て2匹を家族として迎えてくれた。
新たに与えられた名前は、海産物系。
エルサは「ほたて」、アクルは「たらちゃん」。
今は里親さんに連れられて島外へ引っ越していった2匹。
後に3匹目が迎えられ、エルサはお母さんのように、アクルは優しいお兄ちゃんになっていると報告を貰った。
※画像「アクル」と「エルサ」
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093079155483345
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