クレイジー・ラビット 〜犬派と猫派が争う世界に、兎過激派の僕が召喚されたら〜
七篠樫宮
第一羽 ボクとウサギの日常
問、この世で1番かわいい動物は何か?
それはうさぎである。
問、この世で1番かっこいい動物は何か?
それはウサギである。
問、この世で1番美しい動物は何か?
それは兎である。
問、では、この世で1番かわいくて、かっこよくて、美しく、
それは
分かるか、何度も『君は犬派or猫派』と聞いてくる愚か者ども。何度でも答えよう。この世で最高な動物、それはウサギであると――!!
*
僕――
どうして僕がこんなに急いでいるのか。それを語るために、今日の僕のルーティンを紹介しよう。
朝起きて、僕の目覚めにつられて動き出した愛する
小一時間ほど一緒に遊び、朝食を食べ身支度を始める。家を出るギリギリまでチョコラと向き合い、別れを惜しみながらも家を出たのが8時頃。
そこから中学校に着き、真面目に授業を受け、帰りのホームルーム終了のチャイムと共に教室を出たのが今から約30分前。
そして、現在16時ジャスト。僕は、僕は8時間以上も
「チョコラァ――ッ!」
やばい、禁断症状がっ。思考がウサギに侵される。
やはり、学校にペットを連れて行けないのは人権的配慮に欠けるのではないか。現に僕はウサギウム不足で人間性を失いかけている。
学校にウサギを連れて行く場合を考える。ウサギの可愛さで教師は和む。生徒も癒される。いじめはなくなり、学校全体が幸せになるっ! なんて
「見えたっ!」
そろそろ兎跳びで進むかと悩んでいたら、ようやく家が見えてきた。あそこにウサギが、チョコラがいる。過去一の速度で鍵を取り出し、ドアを開ける。浮立つ気持ちを抑えて手を洗い、あの子の待つ部屋へ向かう。
「チョコラっ!帰ってきたぞッ!」
僕が帰ってきた気配に気づき、待ち構えていたのだろうか、
ピンと立った長い耳、ヒクヒクと動かすちぃちゃいお鼻。ωの口から覗く前歯にプリティなお尻の曲線美。チャームポイントのまぁるい尻尾。そしてこちらを見上げるクリクリなお目々。ちなみにメス♀だ。
――ウチの子、かわいすぎ。
こんなかわいい子が存在していいのだろうか。バレたら世界中からチョコラを狙う刺客が訪れるんじゃあないか。そうなったら世界から
「よーし。チョコラ、一緒に遊ぼうな〜」
チョコラの頭を撫でる。ちいさい頭だ、力を加えたら潰れちゃうんじゃないかな? そんな恐ろしいことを飼い主が考えているとはつゆ知らず、チョコラは気持ち良さそうに目を細めていた。かわいい。
「チョコラはかわいいなぁ。かぁいい、かぁいい」
チョコラを持ち上げて抱き抱える。あまりお腹を持たないのがポイントだ。鼻をピクピクしてる。
その可愛さに見惚れていると、だんだん眠くなってきた。あんなに走ったから疲れたんだろうか。
チョコラを抱えたままリビングのソファに横になる。
そういえば帰ってから着替えてないな。このまま寝たら制服がシワになる……。そんな事を考えながら、僕の意識は暗闇に落ちていった――。
*
意識が浮かびあがる。背中からヒンヤリと硬い感触が伝わってくる。
――あれ、ソファで寝てなかったっけ。
疑問に思いながらも起き上がり、目を開ける。眩しい。目を細めながら周囲を確認する。
場所はどこかの宮殿だろうか。壁や扉はキラキラとした黄金色の装飾で飾られ、高い天井には何か――犬っぽい動物の絵――が描かれている。僕レベルだと、すごいとかキレイだとかしか感想が出てこない。
僕から見て奥の方には段差があり、壇上には一際豪華に彩られた、玉座とも言うべき椅子が置かれていた。
そんな宮殿の中央で僕らは座り込んでいた。そう、
僕の他に4人――おそらく日本人――が僕と同じようにキョロキョロと辺りを見渡していた。
僕と同じく、気付いたらココに居た系だろうか。話しかけてみたいけど、状況がソレを許さない。
騎士だ。アニメやマンガの中から飛び出して来たかの様な槍を持った騎士が僕らを遠巻きに取り囲んでいた。
――怖い。
すぐそばに武器を持った存在がいる。何かのドッキリか、それとも単なる夢かとすら思ってたけど、この恐怖感は本物だ。
あちらは槍に鎧、こちらは素手に制服。勝ち目はない。肉食動物に睨まれた
目が覚めてどれくらい経ったか。室内は静寂に包まれていた。未だに僕に何が起きたのか分からない。
そして、その静寂を打ち破るように部屋前方――壇上側の扉が開いた。
人が入って来る。先頭は髭面の男だ。王冠を被り、いかにもな貴族服にマントをつけたイケおじが歩いてくる。その後ろに付き従うのは数人の美少女達。美しいドレスで着飾っている。
イケおじが玉座に座り、側に美少女が立ち並ぶ。イケおじが壇上から床に座り込んでいる僕らを見下ろし口を開いた。
「よくぞ、参った。異界から来た勇者達よ」
美少女達を侍らし、玉座からこちらを眺めるその姿は、とても様になってた。まるで、物語に出てくる偉大な王――事実、この人は王様なのだろう――のようで。
それ故に、僕には一つ言いたいことがあった。そんな壮大な場面を塗り替える、彼らの頭上に生えた
――ケモ耳だ! あの耳は犬系かな? ならウサギ! ウサ耳もいるのか!?
そう、彼らの頭には2つのモフモフな三角形、俗に言う犬耳が生えていた――――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます