第38話 一つの決着と熱い夏の予感
噂その1。元々中性的なきれいな顔立ちではあったが、最近口調や仕草まで妙に女性的になっているだとか…。
噂その2。なにやら中等部の敷地の方でちょくちょくうろつく姿を見かけられているとか…。
噂その3。まるで見えない誰かと話しているかのような独り言が多くなったとか…。
プルナが取り憑いたことにより、メイナード先輩による私、アルカに対しての付きまとい行為は確かになくなったのだけど、その代わりのように新たに囁かれ出した彼の噂はこうだ。
あれから、プルナとメイナード先輩はなんだかんだ言いつつ上手く付き合ってはいるようなのだけど(彼らの間でどんな風に話し合いが行われたのかは正直気になる…)、プルナ自体が久々の生身の肉体に大はしゃぎしているのだろう。
彼女のお目当ての"彼"は中等部所属の攻略キャラクターである"ソルくん"のようで、彼に会うためにちょくちょく中等部の敷地へと通っているようである。
メイナード先輩の奇行については、今は噂になっているくらいに話題性はあるのだけど、もともと変人の問題児枠の人ではあったから、多少クネクネしだしたり、中等部に出没しだしたくらいだと、まあ、いつもの彼のきまぐれかと言うことで、そう遠くないうちに話題に上がらなくなりそうだなぁ…なんて感じもする。
現に少し前に有名になった"私がメイナード先輩に付きまとっている"なんて噂も、今ではすっかり消え去っているのだから。
「…と言うわけで一応、メイナード先輩とのことは片付いたかなって感じになりました…」
私がそんな風にヴィオリーチェに報告すると、ヴィオリーチェは目をぱちくりとさせ、驚いたような顔のままそれを聞いていた。
ゲームでは隠しキャラだった悪霊の少女だとか、それをメイナード先輩に取り憑かせて付きまとい行為を止めさせたなんて、あまりにも素っ頓狂な話だ。そんな顔をしちゃうのもわかるよね…。
余計な心配はかけないよう、用具室に閉じ込められた云々の辺りは伏せつつも、色々と経緯を説明した私に、ヴィオリーチェは頬に手を当てて、はふりと感嘆のため息をつく。
「…結局、貴女は全部自分で解決してしまいましたわね…!」
それは感心したような、誉めるような
「…まあ、そうは言ってもプルナが大体勝手にやっちゃっただけだし、私はほとんど何もしてなかったんだけどね…」
私はなんとなく決まり悪い気持ちになって、パタパタと手を振った。
ヴィオリーチェは少しばかり眉を下げて微笑んでいる。
「…ともあれ…、メイナードとプルナさん…については、気になるところもありますけれど、
「うん、こうやってまたヴィオリーチェとゆっくり話が出来るようになって安心しちゃった…」
これは本当に心からの本音で、今になってようやく実感が沸いてきた。
(…しっかし、"秘宝クレッセントムーンを継承して、プルナの肉体を取り戻す"かぁ…)
今後のことを考えようとすると、プルナが言っていたことが思い浮かんでくる。
彼女の目的と思惑。私に何を期待しているか。
プルナに言われなくても、ヴィオリーチェの死亡フラグを折るために学園一の魔法使いになると言う目標を諦めるつもりはない。…だから、私のやることは最初から何も変わってはいないのだけど、万が一、プルナの期待に応えられなかったとしたら私もヴィオリーチェも何をされるかわかんねーな!と言うプレッシャーも感じていた。
あの子は少なくとも"今"、"仲良く出来ている間"は悪い子ではないと思うけれど、目的の為には手段を選ばない子だともう知ってしまったし、本当に気を許して大丈夫だと信じるには判断材料が足りないと感じるのだ。
(──────まあ、関わってしまったからには、なにがあっても私がヴィオリーチェを守らないと…なんだけど!)
あんまり私がまじまじと見つめていたせいか、それに気がついたヴィオリーチェが「?」と言う様子で少し不思議そうな顔をしていた。
おっと、いけない、いけない…。
「…ところでアルカ」
そんな風にうっかり私がヴィオリーチェの顔を見て、尊みをチャージしていると、ヴィオリーチェは少しばかり躊躇いがちに話を切り出した。
「うん?」
なんだろう?と首をかしげる私に、ヴィオリーチェは言葉を続ける。
「来月の試験の後のお休み、貴女はどう過ごすか予定はお決まりかしら?」
「!!」
…そう。
こうして彼女の言葉で私は初めて思い出したのだ。
来月ある初めての魔法試験のこと、そして…
その後に待っている
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