第22話 突入!!魔法遊園地!!!!
嬉し恥ずかしヴィオリーチェとのデート…じゃなくて、ジャンくん&クラウス先輩ペアと一緒にダブルデートにやってきた私たち4人。
待ち合わせ時間より早めにやってきた私は、同じように早く来ていたヴィオリーチェと一足先に合流し、おめかししたことを褒められてウッキウキのルンルンになっていた。
そうこうしている間にジャンくん&クラウス先輩も合流し、私たちは今回の目的地である魔法学園の生徒たち御用達の遊び場…そしてデートスポットでもある“魔法遊園地”へと訪れたのだった…!!
なんだこのネーミングと思うことなかれ。原作のゲームでそうなんだから仕方ない。
細かいことは置いて置いて、ここはすべての遊具の動力が魔法だから、現実の遊園地よりもエキセントリックなアトラクションがたくさん楽しめる夢の遊園地…という訳だ。
「話には聞いていましたけれど、わたくし、ここに来るのは初めてですのよね」
「私もだ」
カラフルな風船とポップな絵柄のマスコットキャラが描かれた看板で飾られた遊園地の装飾を眺めながら、ぽつりと呟いたヴィオリーチェの言葉にクラウスもこくりと頷いた。
それに驚いたように声を上げたのはジャンくんだ。
「えぇ!?2年前にここが出来た時あれだけ話題になったのに?高等部から入学したアルカはともかく二人は中等部からの繰り上がり組だろ?」
「興味なかっただけだ」
「わたくしは、学業に専念しておりましたので…」
そっけない調子で言うクラウスと、少しばかり躊躇いがちながら優等生らしい返答を返すヴィオリーチェに、ジャンくんは「信じられねー」みたいにまだびっくりした顔をしている。
「ジャンくんは良く来るの?」
私が問いかけると、友達とたまに来るよ答える。このメンバーの中では間違いなく一番友達が多いであろうジャンくん。さすがのリア充ぶりである。
「私は来るのは初めてだけど、色々下調べはした!!」
私が挙手すると、ジャンくんがえらいえらいと褒めてくれた。
来るのが初めて…とは言ったものの、私とヴィオリーチェはゲームの方では散々通い詰めた場所だ。ゲーム通りであるなら、中にあるアトラクションとそれぞれの攻略キャラの好みの場所については把握していると言っても過言ではないだろう。
今回は目的が目的なので、自分に対しての好感度稼ぎはさておき、ジャンくんとクラウス先輩の双方が楽しめるアトラクションを考慮して、回るデートコースをちゃんと考えてきているのである!
そう。まずはド定番のジェットコースター!
…とは言え、ヴィオリーチェが絶叫マシンが苦手だったら意味がない。私たちは遊園地の敷地を歩きながらお喋りをする。
「ヴィオリーチェはジェットコースターは大丈夫?」
本当ならここに来たことのない彼女にこんなことを聞くのは意味のない行為なのだろうが、私たちは転生者なのである。
さすがに前世ではどうだった?とは聞けないのでこう言う聞き方になる。
ヴィオリーチェは小さく頷く。
「ええ。以前のわたくしは結構好きでしたわ」
この世界のジェットコースターをまさか実際に体験出来るなんて夢にも思っていなかったけど…と少しだけ笑う。
「アルカはどうですの?」
そうヴィオリーチェに問われた私ははっきりと答えた。
「(高所恐怖症だしスピード恐怖症気味だから多分死ぬけどヴィオリーチェが好きなものは)私も大好き!!」
そうなんですのね!とヴィオリーチェは私の決死の覚悟に気がつくことなく楽しそうに微笑んでくれる。
大丈夫だ。私はこの笑顔の為ならもう一度死んだって本望…。そうだろう?アルカシア、そして
「あ、でも前の方はちょっと怖いから前にはジャンくんとクラウス先輩に乗って貰いたいな!」
ちゃんと4人できた理由も忘れない。
ヴィオリーチェに特等席を用意するんだ…!
「お、良いのか?やった!」
ジャンくんは素直に嬉しそう。クラウス先輩は何か言いたげにも見える視線をこちらに向けていたが、勝手にしろと短く答えた。たぶんオッケーってことだろう…!
しかし、このゲームのキャラに限らず、乙女ゲームの攻略キャラって何故かジェットコースター好きなキャラが多い気がするな…。いや、現実でもみんな好きなのかな…?
ジェットコースターは人気アトラクションだからそれなりに待ち時間があったのだけど、4人で並んでいる分にはお喋りも出来るし全然気にならなかった。
私がパンフレットを片手に次はあれに乗りたいこれに乗りたいと提案すると、ジャンくんとヴィオリーチェはうんうんと聞いてくれたし、クラウス先輩もそれに乗るなら、回る順番はあっちが先の方が良いだろうとか、こっちから乗る方がスムーズに行けるだろうとか意見を出してくれた。
この人、こんなクールな顔して実は結構楽しみにしてくれていたのかも知れない…?
この世界のジェットコースターは魔法の力を動力としている為、最早重力に縛られる必要すらない。
その為、平気でレールは途中で途切れていて、そこで車両は宙に投げ出されるし、そのまま風魔法の力で一回転する。
そしてそのまま、途切れた先のレールに再び着地したかと思えば、続けざまにほぼほぼ直角の坂を駆け上がり、また垂直に落下する!
ほとんど拷問としか思えないその所業に、私は声をあげることすら出来ず、歯を食い縛って耐えた。
恐らく乙女ゲームヒロインとして許されない顔をしていたことだろう。
途中途中、泡の魔法に包まれながら水中を走ったり、トンネルに突っ込んだかと思えば周囲に星空が映し出されたりとするロマンチックな演出も盛り込まれていたのだが、私はそれどころではなかった。
異世界転生特典に強靭な三半規管はつけて貰えなかったことが判明した出来事だった。
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