第21話 待ち合わせHappiness!!

 そして、待ちに待ったデート…もといダブルデートの日がやってきた!!!

 私は、リリーにコーディネートして貰った普段よりもちょっとオシャレした服装で戦いのステージへと赴くことになった。

 ご存じみんなの憧れの存在であるヴィオリーチェは勿論、冷たい態度に負けて誰も近づけないとは言え、学園長の息子という肩書と美麗な容姿に羨望の眼差しを向ける者も少なくない"氷の王子"クラウス、優しく爽やかな人柄で普通に人気者なジャンくんとのダブルデートなのである。

 この豪華メンバーを知ったリリーは、比喩表現でなく目玉が飛び出しそうな勢いで驚くと、その顔ぶれの中に入るなら普段着じゃ絶対にダメ!!舐めてるのかぶっ殺すぞくらいの勢いで、私の髪をブラッシングするわ、ネイルを塗ってくれるわでそれはもう大変な騒ぎだった。

 リリーは転生者じゃないはずだけど、その様子は、「推しのライブに行く時は最高の自分で向かわなければいけない」と言っていつもとびっきりのオシャレをしていたアイドルオタの友達を思い出す勢いだった。

 私はインドア派のオタクだったから、そこまでオシャレには興味がなかったんだけど、ひらひらの可愛いフリルが付いたスカートに、ぴかぴかつやつやのネイルを着けた自分は、何だか「攻撃力が上がった!」みたいな気持ちになって、ちょっと嬉しくなってしまう。人生二周目にして、初めてオシャレを楽しむ乙女心を知ってしまったね…!

 待ち合わせ場所につくと、もうヴィオリーチェが待っていた…!

 私だって20分くらい前に来たはずなのに…!早い!!!

 ヴィオリーチェも普段よりもおめかししている!!!いつもと違う髪飾りなんかもつけてる…!!!!すごく可愛いし、ヴィオリーチェも楽しみにしててくれたんだなって感じられて嬉しくなっちゃう…。


「おはよ!ヴィオリーチェ、早いよ~。いつから待ってたの???」


 私は彼女の姿が見えた瞬間には駆け出していて、すぐにヴィオリーチェに駆け寄る。ヴィオリーチェはそんな私に気が付くと、柔らかい笑顔を浮かべて控えめに片手を上げて、小さくふりふりと手を振ってくれた。

 彼女が"悪役令嬢"だったらまずしないような仕草。でもこの(元)悪役令嬢さんは、こういう清楚で可憐な仕草も…似合っちゃうんだよな…。


「わたくしも今着いたところですわよ。アルカこそ早めに来てましたのね」

「へへー。楽しみ過ぎて寮を早く出過ぎちゃったみたい」


 そうやって私が笑うと、ヴィオリーチェも微笑む。

 なんだか今の凄く"デートっぽい会話"じゃない?なんて、私はさらにテンションが上がってしまう。

 私の服装やネイルについてもヴィオリーチェは気が付いてくれて、可愛いって褒めてくれた…!!!!!ううっ、嬉しい…!!

 なんだかもうジャンくんもクラウス先輩のことも忘れたふりして二人で出発しちゃってもいいくらいの気持ちになってしまう。(……さすがにやらないけど…)

 私はこのお出かけをとても楽しみにしていたけど、今回の主目的は私が楽しむことじゃない。ヴィオリーチェを楽しませることなのだ…!その為にイケメン二人を人身御供ひとみごくうに…じゃなくて、観賞用BL…じゃなくて、うん。とにかく、ヴィオリーチェの目の保養にして貰うようなアレ!です!

 ヴィオリーチェ本人にも言ったけど、彼女は長いことずーっと自分の楽しみなんか見つける暇もないくらい頑張ってきたのだから…。私以上に、今からでもこの異世界転生ライフを楽しむべきだと思う。例えそれが登場キャラクターのBL妄想だとしたって、私は彼女の楽しみの為だったら全力でお手伝いするって決めたんだ…!!


 そんな風に気合いを入れ直しつつ、ヴィオリーチェとの2人の時間を楽しんでいると、やがて待ち合わせの時間がやってきたのか、ジャンくんの声がした。


「アルカ、ヴィオリーチェ、早いな!おはよー!」


 視線を向ければ、当然だけど私服のジャンくん&クラウス先輩だ!

 ちゃんと先輩を連れてきてくれた~!ありがとう~!って感謝の念をアイコンタクトで送ったら、それに気がついた様子のジャンくんはソフトクリーム奢れよ!ってウインクを返してきた。(爽やかイケメンスマイル…!)

 クラウス先輩は、相変わらず何を考えているのかわからないクールビューティな無表情で、挨拶だけはしてくれたんだけど、じっと私やヴィオリーチェの顔を見てからまた黙ってしまったので何を考えているのかやっぱりわからない…。

 私はまあまあ呑気に(私服立ち絵だ~)なんてゲーム脳な感想を抱いていたし、隣に立つヴィオリーチェも多分同じだったと思う。

 ヴィオリーチェも2人の私服姿を見たのは初めてだったのか、その表情はちょっと緩んでいて、私は嬉しさと共にちょっとした嫉妬は感じていた!!!ちょっとだけ!

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