第20話 全ては貴女の笑顔のために
「ジャンとクラウスと、わたくしとアルカでダブルデート!?」
「そうそう。今度のお休みに4人でおでかけしたいなって思って!」
私の提案に、ヴィオリーチェは目を丸くした。
これは私が彼女の秘密を聞いてしまった後だから、ヴィオリーチェはそのメンバー構成にさすがに少し警戒したのかも知れない。もしくは、私が何か良からぬことを考えたのでは?と心配しちゃったかもしれない。……でもまぁ、別にそんなことはないし…。…………あるのは下心くらいのものだし…。
「ヴィオリーチェは私のことを勉強ばかりに根を詰めている…みたいに心配してたけど、そんな風に言ったらヴィオリーチェの方がずーっと長い間頑張り続けてきたわけだから、たまには息抜きも必要でしょ?」
実際にそう思ったのは本心だけど、それはそれとしてこう言ったらヴィオリーチェは反論しにくくなるって、何となくわかっていて言葉にする私。
予想通り「うぅ…」ってなったヴィオリーチェを眺めながら、最近(自分って実は性格が悪いのでは?)と言う気がしてくるが、相手を傷つけるためのことではないので許して欲しいなんて心の中で言い訳をしていた。
眼の前のヴィオリーチェは少し悩むような、それでいて照れくさそうな表情でもじもじとしている。これは押したら行ける時の様子だと思う。きっとそう。
「貴女やあのお二人と一緒にお出かけ…なんて、…確かにそれは楽しそうですけれど……」
「でしょでしょ?」
「…でも、わたくしはお二人と特別に仲が良い訳ではないですもの。それなのにご一緒なんてしたらお二人が迷惑なんじゃ…」
「そんなことないって。それを言ったら、私なんてクラウス先輩と会うたびに皮肉か嫌味を言われるくらいだし…別に全然仲良くないよ」
自分で言っておいてなんだけど、全然仲良くない相手をダブルデートに誘うのもわりと頭がおかしいな…。でもまぁ、私がジャンくんと仲良しで、ジャンくんがクラウス先輩と仲が良いならまぁギリギリセーフでしょう…と言うことで脳内でセーフ判定を出す。
しかし、ヴィオリーチェは賢いので、やはりその辺りに違和感を覚えたようだ。ムムっと少しばかり眉を顰めた。
「……えぇ……?……それ、アルカ気まずくありませんの…?」
「でも、ゲームでも最初はそんなもんだったじゃん?」
「……あ」
ヴィオリーチェがそう言えばそうですわね…と笑ってくれたから、私もついつい笑顔になる。ゲームの時の"あるある"で、例えキャラクターたちに冷たくされてもネタに出来ちゃうの転生者特権だと思う。
「一応ダブルデートってていではあるけど、そう気を張らないでさ、お友達4人でお出かけってことならいいでしょ?ね?」
「アルカは本当に行動的ですわね…」
「いやー、私もこの世界を楽しんでるってことで…」
「…ふふっ。それならわたくしも嬉しいですけれど」
私の言葉にまたヴィオリーチェが柔らかく微笑む。
仲直りはしたものの、あの時ヴィオリーチェが言っていた"私にこの世界を楽しんで欲しい"との言葉は本音だったのだと思う。
この時のヴィオリーチェは、何処かちょっと安心しているみたいだったから。
そんな訳で、ヴィオリーチェの了承も得ることが出来た私は、ダブルデート…もとい、4人でのお出かけを決行することとなったのだ。
ジャンくんもなんだかんだ言っては居たけれど彼のことだ。うまいことクラウス先輩を説得して連れてきてくれることだろう…!
当日はヴィオリーチェの笑顔がたくさん見られると良いな、なんて私はワクワクしながらその日までの時間を過ごすのだった。
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