第23話 vs氷の王子?!ミラーハウスの攻防
ジェットコースターの試練を何とか乗り越え生き延びた私は、その後ゴーカートやらコーヒーカップ、お化け屋敷を皆で楽しんだ。
ゴーカートやコーヒーカップは例によって魔法のパワーによって速度や回転具合がハチャメチャだったので度々気が遠くなったし、お化け屋敷はお化け屋敷でVRも顔負けのリアルさの───────と言うかあれは幻影を見せているのかな?本当にそこにお化けがいるみたいな迫力で、私だけじゃなくてヴィオリーチェもビックリして声を上げていたし、あやうく攻撃魔法が出そうになってた!(未遂で良かった…)
私は絶叫系のアトラクションは苦手だし内心では結構ヘロヘロだったけど、少し気恥ずかしげな…でも楽しそうなヴィオリーチェを見ていると、私も嬉しくなれた。
ジャンくんもクラウス先輩も、時折軽口を叩きあってじゃれあっている様子があって、やっぱり仲良いんだな…と感じられたりもした。
それを間近で浴びたヴィオリーチェは、必死に真顔を作ろうとしていたけど耐えられずにちょっとニヤけてしまっていたので、私はそれを見なかったことにしたよ…!これが配慮ってやつ!
そんなわけで色んな意味で楽しく過ごしていたのだけど、昼食を済ませ、おやつにソフトクリームを食べた後でその事件は起こった。
いわゆるミラーハウス…鏡の迷路に入ることになった私たちは、二人ずつ入るアトラクションなのでどうペアを作ろうかと話していた。
ここまでは何だかんだ自然と私とヴィオリーチェ、ジャンくん&クラウス先輩と別れることが多かったのだけど、いざミラーハウスに入ろうとなった際に、急にクラウス先輩が私の腕を掴んで引っ張ったのだ。
「?!」
「行くぞ」
驚いている私を尻目にクラウス先輩は淡々とそう言い放ち、私はあれよあれよと言ううちにミラーハウスに連行されてしまった!ウワー!!
後の方からやっぱりビックリしているようなヴィオリーチェとジャンくんの声が聞こえた気がしたけど、それもすぐに聞こえなくなってしまった…!
ななななななんだなんだ?!
私が何をしたって言うんだ…???
二人っきりになりたい♡みたいに思われるほど好かれる要素もなかったよね???
私は動揺した。ゲームにないイベントは何が起こるのか予想が出来ないんだもん…!
「………」
ミラーハウスは、壁どころか足元も、天井までもが全部鏡になっていて、足を踏み入れた瞬間に不思議の国にでも迷い込んでしまったような錯覚を覚えた。
鏡も、物によっては太って見える鏡や痩せて見える鏡、縮んで見えたり、縦に長く見える鏡など様々で、進む度にびっくりしていまいそうになる。
私とクラウス先輩は、しばらくは無言のまま鏡の迷路を進んでいた。
「アルカシア」
鏡の迷路もそろそろ中盤くらいに来ただろうか?なんて考えていた頃、不意に先輩の声に現実に引き戻される。
先輩の方へ視線を向けると、クラウス先輩は何処か鋭い視線を私に向けている。これは元々の目付きが悪いとかではないと思う…。
「な、なん……」
「お前、何を企んでいる?」
私が返事をするより先に…と言うか若干被せ気味にクラウス先輩は言った。
「え?」
「お前が何か企んでいることはわかっている。下手に誤魔化そうとしても無駄だぞ」
「……」
以前私がジャンくんとクラウス先輩の会話を盗み聞きしていたのがバレた時と同じ感じだ…!尋問されてる…!
「え、えーと、企みなんて…そんな…」
「…まあ、大方予想は着いているが…」
「え?!」
「当然だろう。お前たちの様子を見ればすぐわかる」
「…え、え…その予想って…?」
「恐らくはヴィオリーチェが私に好意を寄せているという事だろう」
「違います」
即答してしまった。
つい真顔になっちゃったし、声のトーンが落ちちゃってた。
いや、だって、つい……。
私がついムッとしてしまい臨戦態勢モードを見せてしまったせいか、クラウス先輩の追及も続いてしまう。
「ジャンからは、今回の件、まだ友人も少ないお前の為の親睦会だと聞いていたのだが、ジャンとヴィオリーチェはお前にとって既に親しい相手だ。それなら、私が呼ばれた理由は、お前が私と親しくなりたいからか?と考えもしたが、お前を見た限りそうは見えなかった」
「(…そこは見抜かれてるんだ…)」
ジャンくんに対しても大概だけど、確かに彼に限らず私はヴィオリーチェ以外の相手に対しては扱いが雑だったかも知れない…(反省)。
特にクラウス先輩に関しては、ジャンくんと少しでも絡んでくれるよう、あまり自分から話しかけないようにもしていた。そりゃあ、親しくなりたいようには見えないのはそうだろう。
「加えてヴィオリーチェの態度だ。お前と知り合ってからずいぶん年相応のような
「……」
「ここのところ彼女から妙に視線を感じる。…隠そうとしてはいるようだが、妙に熱のこもったそれを、な」
「………」
ジャンくんは全然気がついてないのに、勘の良い氷の王子め…
確かにヴィオリーチェはクラウス先輩を熱の籠る目で見ているだろう…!ジャンクラ尊い…!と言う目で見てるんだから!!
しかし、このままでは、クラウス先輩の中でヴィオリーチェがクラウス先輩を好きだと思われてしまう!
それはなんかイヤだ!!だってそれでクラウス先輩がヴィオリーチェを好きになって告白なんかしちゃったら?ヴィオリーチェがOKしちゃったら?私は頭がおかしくなってしまうかも知れない。
でも、だからって、クラウス先輩にBLのことやヴィオリーチェが先輩を"受け"だと思ってることなんて絶対に話せない…!
ヴィオリーチェの頭の中にだけ存在する、"ジャンくん相手だと可愛い子猫ちゃんになってしまうクラウス先輩"のことをクラウス先輩本人が知ったら、クラウス先輩が死んでしまうかも知れない。
何とかここは上手いこと誤魔化さないと行けない…!
「クラウス先輩…実はですね…」
「なんだ」
「私がヴィオリーチェに魔法を教えて貰っている理由…それは、彼女をトップの座から引きずり落とし、自らが学園一の魔法使いになる為なんです…」
「!」
野心家には到底見えないだろう私(ゆるふわピンクのキュートな乙女)の発言に、クラウス先輩はさすがに驚いているようだ。私はそのまま言葉を続ける。
「…ですが、彼女の前に私の障害となるのは学園でNo.2の実力と言われる貴方です。ヴィオリーチェは、私の目的を知っているからこそ、私がまず貴方を越える魔法使いになれるかどうか見極めようとしているのかも知れません」
「なるほど?自らの弟子の障害足りうる存在かどうか、私をも値踏みしていたと言うことか」
「恐らくは…」
「とんだ女ギツネだな。お前もヴィオリーチェも。しかし、全く失礼な話でもある」
「?」
「ヴィオリーチェは、私では自分と競い合うライバルにならないと踏み、お前を育て上げようと言うのだろう?私からすれば屈辱的この上ないと思わないか?」
「それは…」
あ~…そうなっちゃうか…と申し訳ない気持ちになるが今さら出したカードは引っ込められない。神妙な顔をキープするしかない。
「まあ、いい。お前たちがそう言うつもりなら、こちらもその挑戦、受けて立とう」
「え」
「なんだ?元より学園一の座を得ようとしているなら通らざるを得ない道だろう?」
「まあ、確かに…」
「そうだ。これからは私もお前をしごいてやろう。少しはマシになったようだが、その程度ではまだまだ私やヴィオリーチェを越えるなんて戯れ言にもならないレベルだからな」
「え、えぇ???」
思いもよらない提案に私は間の抜けた声を上げてしまうが、クラウス先輩は対照的に満足そうだ!
この人の"しごき"なんて、正直あんまり考えたくないなぁ~!!!
こうして私は、ヴィオリーチェの秘密を守ることと引き換えに、クラウス先輩と予定外の関係性を築いてしまうことになったのだった!
クラウス…、ゲームじゃこんなやる気満々の人じゃなかったよな…。私、もしかして余計なことしてゲーム難易度上げちゃった…?
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