第4話 もしかしてあの娘も転生者!?
そんな訳で、波乱の交流会イベントは幕を下ろし、私…
前世の自分が死んでしまったことも、好きだったゲームの主人公に転生しちゃったことも、もう衝撃しかなく、ショックを受けていいのか喜んでいいのかもわからないような微妙に混乱した心境なのは確かなのだけど…、それよりも今は気になることがあった。
それは、何故か原作のゲームと全然違う性格をしている私の推し…悪役令嬢のヴィオリーチェ・レアンドラのことだ。
どうして彼女一人だけゲームと性格が違っているのか?何か理由や原因があるのだろうか?
それが気になって気になって仕方がなかった。
だから私は、魔法学園での講義を受け、ゲームでは攻略対象キャラだったイケメンたちやその他のNPCキャラクターたちと出会ったり、会話イベントらしきものをこなしながら、ヴィオリーチェについての情報収集をすることにした。
「高貴な立場にありながら、それを鼻にかけることもない優しくて素敵な人よ」
「学園一の魔法の知識と腕を持っているのにも拘らず、自分に厳しく、どこまでもストイックに修行に励む凄い人だよ」
彼らは皆口々にヴィオリーチェを称賛し、彼女の人柄や生き様を褒めたたえるばかりで、悪い話なんて一つも出て来なかった。
ゲームでのヴィオリーチェは、その美貌や魔法の才能と腕前こそ誰もが認めるところだったけれど、実力主義であり他人にも自分にも厳しい彼女は、他人に対しても厳しい態度で当たることが多く、人柄についてはどちらかと言えば恐れられていた。
ゲームでの攻略対象キャラだった数人のイケメン男性キャラたちも、恋愛感情…とまではいっていない様子だったが、やはり彼女を人として尊敬し、親愛の感情を抱いていると言うのがわかった。
攻略対象キャラからヴィオリーチェへの初期好感度はそこまで高いものではなくて、主人公であるアルカがよっぽど気合を入れて好感度を下げまくらない限りは、基本的にゲームの序盤で彼らとヴィオリーチェが仲良しになる…なんてことはほとんどなかったはずだ。やはりゲームとは違っているようだ。
ここまで来て、私は一つ思いついたことがあった。
それは、ゲームとは違う選択をし、ゲームとは違う展開に進むことが出来ると言うことは、そもそもゲームでの展開を知っているものにだけ出来ることではないのか?と言うことだ。
「もしかして、ヴィオリーチェも転生者なんじゃ…?」
そうだとしたら、主人公である自分よりも早くこの世界に転生した彼女が、先んじてこの世界で自分の立ち場を選び取り、皆に愛される憧れのお嬢様としての立場を確立しておいた…ということで納得は行く。
悪役令嬢としてのヴィオリーチェにとって、アルカは彼女の人生を狂わせることになる元凶だ。彼女は自分が悪役令嬢として破滅しないために、悪役令嬢として作り上げられたキャラを変えてでも、運命と抗おうとしてるのかも知れない。
中身が転生者だとしたら、この世界のヴィオリーチェは、私の知っているゲームでの推しとは違う人なのかも知れない。
…けれど、元の世界とは全然違うだろうこの世界で、転生のことなんて誰にも話すことが出来ない中、たった一人で一生懸命生きて、皆に愛される人物であり続けたと言うのは物凄いことのように思える。
それだけで私が、"この世界のヴィオリーチェ"に興味と敬愛のような感情を抱くのに十分過ぎる理由になったのだった。
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