第5話 あの娘との密会目指して魔法習得RTA!!
一人だけ原作であるゲームでの設定と違う性格をしている悪役令嬢"ヴィオリーチェ・レアンドラ"が自分と同じ『転生者』なのでは?と推測した私は、本当に彼女が転生者なのかを確かめるため、彼女の元へと向かっていた。
この世界のヴィオリーチェはとても人気者だったから、女子寮でも学園でも常に周りにたくさんの人がいて、なかなか二人きりで話をするなんて出来る状態ではない。
でも、転生者かどうかなんて話を他人に聞かせるわけにはいかない。だから私は、特定の相手にだけ、メッセージを伝える事が出来る風の妖精の魔法を使うことにした。
この魔法は、落ちこぼれのアルカが、原作で一番最初に使えるようになる初級魔法で、攻略対象の男の子の一人と特訓するイベントがあって、それから使えるようになるものだったはずだ。
だから私は、もう大急ぎでその男の子と仲良くなって、「私に魔法を教えて!」って選択肢を出そうと頑張った。…いや、ゲームの世界…とは言え、今は現実の世界だから…実際に目の前に選択肢が出てくるわけではないので、実際はなんかそれっぽい雰囲気になった時に、私がその台詞を言うって感じなんだけど…。
明るくて努力家な女の子がタイプと攻略サイトに書いてあった元気少年の赤毛のジャンくんに、朝は登校中の彼に明るく元気に挨拶をして、お昼は購買(遭遇ポイント)に会いにいき、彼が一番好きな焼きそばパンを自分も好き♡と共感して、そのまま一緒に焼きそばパンといちご牛乳を買って、中庭で一緒にご飯を食べて…と言うのを一週間続けた頃には、私とジャンくんはすっかり仲良くなっていた。
話の流れで魔法をうまく使えないというコンプレックスを打ち明けると、彼は私に風妖精の魔法とそのコツを教えてくれることになった。
落ちこぼれという設定の私にちゃんと魔法が使えるようになるか不安はあったのだけど、ジャンくんの教え方が良かったのかちゃと魔法を習得することが出来た時にはちょっとだけ感激してしまった。
「……うん!…アルカの声、ちゃんと聞こえたよ!!!成功だ!!」
「…ほ、ほんと!?良かったぁ…!!!!!」
目の前でジャン君が嬉しそうにニコニコと笑って、ピースサインを向けてくれる。
悪役令嬢のことで頭がいっぱいになっていて忘れてたけれど、さすがに乙女ゲームの攻略対象となっているイケメンの一人だから、改めて顔を見れば本当に顔が良い。そして、こんなに優しくて親切なのである。自分が恋愛関係になるかは別として、これからも良い友人関係を築いていけたら嬉しいな!!!!と思った。
そんな訳で、RTAでもしてんのか?という勢いでジャンくんイベントを回収し、風の妖精魔法を習得した私は、その魔法を使ってヴィオリーチェを呼び出したのだった。
この魔法は簡単なメッセージを届けることしか出来ないし、一方的に届けるだけ…と言うものだから、呼び出したところで彼女が来てくれなかったら意味がないのだけど…。
彼女が転生者であるなら、このゲームの主人公であるアルカ…私からの呼び出しを、ゲームにはなかったイベントを、絶対に無視はできないだろうという妙な確信があった。
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