第2話 嘘でしょ!?推しに会えるの!?
どうやら病気で死んでしまった後、乙女ゲーム『魔法学園・クレッセントムーン』の世界に異世界転生した私、
あまりの衝撃に絶叫をかましてしまった私は、慌てて部屋に駆け込んできた、ルームメイトであり親友設定であるNPCの女の子、リリーことリリアンヌに、熱でもあるんじゃないの!?と再びベッドに押し込まれ、回復魔法をかけられたり、精神安定ポーションだと言うのを口に突っ込まれたりするなど、それはそれで大変な目に遭った。
回復魔法はキラキラした光がぽわっと見えて綺麗だったけど、ポーションは苦くて死ぬほどまずかった…。私も錯乱していたけど、リリーも突然親友が頭がおかしくなってしまったと大混乱だったみたい…。まぁ、それは仕方ないよね…。
そんな風に私が彼女とバタバタワーワーとやっているうちに、私の中に
この世界の私は、アルカシア・メイソン。愛称はアルカ。この春にこの魔法学園へと入学したばかりの新入生。お父さんが優秀な魔法使いで、この学校の卒業生だったという縁で私もここに入学することになったのだけど、魔法の才能はお世辞にもあると言えない落ちこぼれで、エリート子女たちが多く通うこの学園ではちょっと馬鹿にされている…みたいな感じだ。
転生者として、穂波として知っていたゲームでの設定と、自分自身の思い出として存在するアルカの記憶が混ざり合って、何とも言えない気持ちになる。
そう、このゲームの主人公アルカは、私は、最初落ちこぼれ主人公だったんだ…!!
「…びっくりさせちゃってごめんね。寝ぼけてたみたい……」
何とか誤魔化そうと、えへへへへ…と笑って見せると、リリーは呆れたような顔でため息をつきつつも、ちょっと安心したような顔を見せてくれた。
「ほんとにびっくりしちゃったよ、アルカってば!!ゴーストにでも取り憑かれちゃったのかと思った!」
腰に手をあて、頬をちょっとだけ膨らませ怒ったような顔をする姿はちょっと愛らしい。
「今夜は女子寮の先輩たちとの交流会がある日だし、体調不良って言ってお休みすることにでもなったらどうしようかって思っちゃったよ」
女子寮の交流会。…そう言えば、序盤に確かにそんなイベントがあったような…。
思い出そうとしつつ、リリーの話の続きを待つ私。リリーの話は続く。
「ただでさえアルカはちょっと先輩たちから目を付けられてるんだし、あんまり目立つようなことするのは良くないもんね…」
そうだった。お父さんが有名な魔術師ってことで、私は、コネ入学だとか調子に乗ってるとか、先輩たちから妙に睨まれているんだった。
「それに、交流会には何と言ってもあのヴィオリーチェ様もいらっしゃるし………」
「…ヴィオリーチェ!?」
自分の置かれた立場を思い出すと、無意識にうつ向きがちになっていた私だったが、出てきたその名前に思わず、弾かれたように顔をあげてしまった。
その勢いは、リリーも驚くくらいだったようだ。びっくりした顔で私を見ている。
「…あ、アルカだって聞いたことはあるでしょ?…あの有名な貴族レアンドラ家のご令嬢であり、この学園の生徒会長でもあるすごーい人なんだから…」
「う、うん…まぁ…」
知らないわけがなかった。…とは言え、この世界ではまだ出会ってもいない状況だけども…。
『魔法学園・クレッセントムーン』というゲームの登場人物の一人である『ヴィオリーチェ・レアンドラ』は、所謂『悪役令嬢』である。
主人公であるアルカのライバルキャラであり、障害となるキャラクターという訳だ。実力主義である彼女は、有名な魔法使いである父の娘でありながら落ちこぼれな私を軽蔑し、嫌悪し、初対面からかなり高圧的に・攻撃的に接してくる
正直なところ初プレイ時はかなりムカついて、彼女に勝つために育成パートを死ぬほど頑張ったのを覚えている。
でも、何回もプレイしていくうちに、少しずつ彼女の可愛いところが見えてきてしまって、段々と憎めないキャラだと思うようになって、しまいにはゲームの発売から数年後、追加ディスクとして彼女との友情エンディングが実装された時には、速攻で予約して購入しちゃったりして…、気が付けば攻略対象のイケメンたちを差し置いて最推しになっていたキャラだったのだ。
―———じゃあ、この後、本物のヴィオリーチェに会えるってこと!!!!?
訝し気に私を見つめるリリーの視線にすら気が付かないくらい、私は浮かれた気持ちになってしまっていた!!!
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