転生ヒロインは悪役令嬢をお姉さまと崇めたい!
夜摘
転生ヒロインは悪役令嬢をお姉さまと崇めたい!
第1章 転生ヒロインと悪役令嬢
第1話 死んじゃった私、乙女ゲーム世界に転生する?!
多分、私、
その時の記憶は朧げで、細かいことまでは思い出せないのだけれど、息をするだけで胸が痛くて苦しくて、身体は指先の一つすら思い通りに動かせなかった。そしてとにかく寒くて…寒くて溜らなかった。
私は病気だった。高熱が続いて、身体の機能が少しずつ壊れて行って、遂には死に至る。そういうものだったんだと思う。
でも、私は自分がそんな風に死んでしまうなんて少しも思っていなかったから、ついに死んでしまうってその瞬間にも、まだ自分が死んでしまうなんて思ってもいなかった。とにかく寒くて、辛くて、苦しかったから…、このまま眠って意識がなくなるなら、寝ている瞬間だけは楽になれる。…きっと寝ているうちに薬が少しでも効いて、次に目が覚めたら少しは体も楽になっているに違いない。そうあって欲しい…。そんな風に願い、祈りながら、私は薄れていく意識の波に身を任せていた。
目が覚めた瞬間、私は混乱した。
眠りに落ちた時、確かに私は期待していた。体が良くなっているようにって。そして確かに体は楽になっていた。酷い寒気も身体の痛みも全くなくなっているし、呼吸も苦しくなかった。
けれど、こんなことは想像もしていなかったのだ。
私が目が覚めた場所は、見慣れた私の部屋でも真っ白な病院でもない、全く見覚えのない部屋だった。
「え、え、え…?…なに…なんで…?」
当然寝ているベッドも見覚えがない。慌てて部屋を見回す。
綺麗に整理されたその部屋は、光が差し込んでくる大きな窓があって、木製の…ちょっとアンティーク風の雰囲気がある勉強机が二つと、長方形の全身鏡、たくさんの本が並べられた大きな本棚がある。
よくよく見て見ると、自分が寝ていたのは二段ベッドの下側のベッドらしいことにも気が付く。天井?がある。
「………あれ?…………ここ、………まさか………」
見覚えがない。混乱している最中にはそう思っていたが、こうしてよくよく見て見たら、微妙に見覚えがあるような気がしてきた。…要するに、思い出してきた。
「これ…"魔法学園・クレッセントムーン"の、自室(学生寮の部屋)の背景画面じゃん……………」
"魔法学園・クレッセントムーン"
それは、私が以前プレイしたことのある乙女ゲームだ。世界観は異世界ファンタジーで、舞台は学園もの。一般生徒である主人公が、ひょんなことからイケメン同級生や先輩後輩たちに見初められて、ドキドキの学園生活を送ったり、世界の危機を救うべく愛する人と力を合わせたりするというストーリーだった気がする。別段目立った特徴がある訳ではない。良くも悪くも量産型の乙女ゲームと言う感じのゲームだった気がする。
しかし、それがわかったところで私はまた呆然としてしまう。まさか、ここがコスプレをした人たちご用達の撮影スタジオなんてこともないだろう。あまりにも再現度が高過ぎる。
私はあまりにも慌てていたので、ベッドから転がり落ちるような勢いでベッドから飛び降りて、先ほど部屋を見回した時に見つけていた全身鏡の前へと走った。
「……う、嘘でしょ………」
そこに映る自分の姿は、私の記憶にある私の姿とは全然違っていた。
淡いピンク色のゆるふわウェーブのセミロングの髪。大きくて丸い綺麗な青色の瞳。白くてきめの細かい肌。
「ああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!?????」
嫌な予感はしていた。確かにしていた。
けれど、それでも心のどこかに(まさか…そんなことあるわけないよね…)と思っていた考えがあった。しかしそれは無情にも粉々に粉砕されてしまった。
私は、この現実があまりにも、あまりにも衝撃的過ぎて、鏡に映る愛らしい美少女の顔には到底似つかわしくない間抜けな叫び声をあげてしまうのだった。
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