第14話 はさみ将棋

ルール

・盤面が5×5のはさみ将棋

・コマはそれぞれが3つずつ持つ。

・1つでもコマを取られると負け。

・勝者は賞金5000万円。敗者は死。

・持ち時間は1分、それ以降は1分ごとに1000万円の負債。

負債がある状態で死亡した場合は、近親者が代わりに債務者となる。


***



この盤面。

――――――――― 

□ □ □ □ ▼

▼ □ □ □ □

□ △ ▼ △ □

□ □ □ □ □

□ □ □ □ △

―――――――――


冷や汗が頬を伝う。


「の、のう。シメジよ。今回は見逃してくれぬかの」


「何言ってんだよ、老いぼれじいさん。負けてんだよ。元棋士もたいしたことねえな。はさみ将棋のルールを誤解してるなんて!」


スタッフが無情に続ける。


「トマト様、このまま打たないと1分ごとに負債が発生します」


負ける、このわしが。


将棋では、タイトルを取ったこともある

このわしが。


こんな遊びの将棋で負ける。





「持ち時間、あと、10秒です」



スタッフの声で我に返り、

家族に迷惑はかけられないという思いだけで、負けると分かっている手を打つ。


パチッ


――――――――― 

□ □ □ □ ▼

▼ □ □ □ □

□ △ ▼ △ △

□ □ □ □ ↑

□ □ □ □ ↑

―――――――――


「はい、これでおわりっと!」


シメジは喜びを隠せていない。

意気揚々と打った。


パチッ


――――――――― 

□ □ □ □ ▼

↓ □ □ □ □

▼ △ ▼ △ △

□ □ □ □ □

□ □ □ □ □

―――――――――



「勝負が決まりました。勝者はシメジ様です」



「ぬお”お”お”!」

自分の腹から、聞いたことも無いような叫び声が出る」


「なぜじゃー!なぜわしが負けにゃならんのだ!」


精一杯抵抗する手足を数人のスタッフに押さえられ、ずるずると引きずられながら奥の部屋に連れて行かれる。

一瞬、シメジの笑顔が見えた。


絶望で意識が遠のく。

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