第5話 7枚ババ抜き

手元にある招待状には、ゲームのルールが書かれていた。


ゲームのルール

・内容はババ抜き(ただし、カードを引くのはジョーカーを持っていないプレイヤーだけ)

・使うカードは赤色の絵札とジョーカー。7枚

・最後にジョーカーを持っていると死

・手札が全部無くなったら、勝ち。賞金5000万円。

・ジョーカーを引くたびに、ひいた人が負債2000万円を負う。

・1手の持ち時間は1分。それ以降は1分ごとに1000万円の負債。

 負債を負った人が死亡した場合は、近親者が債務者となる。


***


「つまり、ジョーカーを引く回数が2回以下で勝てば、賞金を持ち帰れるんですね」


念のため、賞金がもらえる条件を確認する。


「その通りです。キノコ様。3回以上引いてしまうと、勝っても負債を負うことになります」


黒いネクタイのスタッフが答える。

続けて質問する。


「この、ルールの( )の中に書いてあることはどういうことですか?」


「そのままの意味です。このババ抜きでは、ジョーカーを持つプレイヤーはカードを引くことはできません。つまり、ジョーカーを引かずに、相手の全てのカードを引けば、相手は何もすることもなく、キノコ様が勝つことができます」


・・・あ、キノコと言うのは、私のことです。もちろん本名ではないですよ。


本名は、シタヒロ。キノコというのは、このゲームに参加するためのニックネームです。


***


私がこのゲームに参加するようになったきっかけは、会社のお金を横領してしまったから。

会社のお金を、2500万円ほど使い込んでしまったのがばれて、それを返済しないといけないことになってしまったの。


出会い系サイトで出会った男の人から貯金と、高そうな車をもらって、返済にあてたけど、全然たりなかったわ。

だから、どうしても、ジョーカーを引く回数は1回以下で勝ちたいわ。


***


無機質な部屋に裸電球、簡素な机と椅子。


机の向こうに座っているのが、対戦相手のライトさんね。

30前半ぐらいかしら、短くそろえた髪と、日焼けした肌が特徴的ね。

もっと違う出会い方をしていれば、ときめいていたかもしれないわね。


そんなこと考えるのはやめましょ。


きっと、この部屋から生きて出られるのは、1人なのだから。


「はじめまして、ライトさん。お手柔らかにお願いします。できれば負けていただきたいのですが・・・」


「よう。ねえちゃん。俺は、交通事故を起こしちまって、保険に入ってないもんだから、どうしても金がいるんだよ。そっちが負けてくれねえかな」


やはり、ここに来る以上は、勝ちたいのね。


「私にもお金が必要な理由があるんです。勝ちに行かせてもらいますね」


黒いネクタイのスタッフが、トランプを持って、机の横に座った。


「では、始めますね。それぞれがにJ~Kの絵札3枚、どちらかにジョーカーが含まれています」


言いながら7枚のトランプを見せた。

♡のJQK、◇のJQK、それとジョーカー。


「どちらが最初のジョーカーを持つかは、コイントスで決めさせていただきます。ライト様、裏か表かお願いします。当てたら最初のジョーカーを持ちます。そして、ジョーカーを持たない方が先にカードを引きます。」


ピンッ


パシッ


コイントスをこれだけきれいに行えるということは、相当練習してきてるんだな。と勝手に想像する。


「表だ」


どっちでもいいというような言い方でライトさんは答えた。


結果は、表。


「では、最初のジョーカーはライト様です。キノコ様がライト様のカードを引いてください」


手札

ライト |♡J|♡Q|♡K|Joker|

キノコ |◇J|◇Q|◇K|




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