第2話 リバーシ

0巡目。


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先攻●ムーン

後攻〇とうふ


***


パチッ パチッ


しばし、無言で石を置いていく。


お互いが、角を取るタイミングを伺っている。


「あの、とうふさん」


「なんですか」


「私、さっき、スタッフさんが言ったとおり、母の入院代が必要なんです。しかも、私が負けたら、まだ高校生の弟が負債を背負って生きていけるはずがありません」


「まあ、そうですよね」


「だから、わざと負けてくれませんか。角を4つとも取って」


お互いが、生きたいと思ってしているゲームで、よくもまあ言えたものだ。

まあ、ムーンさんの事情も分かるが、こっちだって命がかかっているのだ。


「その気持ちは分かりますけど、それはできません。私だって、ここを生きて出て、お金が必要なんです」


ふと顔を上げると、ムーンの顔はびっしょりと汗が噴き出していた。

どうしても、負けてくれないかと訴えているかのようだった。


そして、


6巡目。先攻終了


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もうすでに、ムーンは角を取れる状態にまで来ている。

しかし、それは、こちらが誘導して取らせようとしていることは、ムーンも分かっているようだ。

このゲーム、ただ勝つだけではいけない。

うかつに角を取ってしまうと、勝っても負債を背負ってしまう。


しかし、9巡目。先攻●ムーンが、角を取った。


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□ □ □ ● 〇 □ □ □

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□ □ □ ● 〇 □ 〇 □

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ついにムーンが右下の角を取った。しかも、下の一列のほぼ全てを黒で確定させてしまった。

うかつだった。


「ムーン様が、角を取られましたので、場所代の2000万の負債を負ってもらいます」


黒ネクタイのスタッフが淡々とルールを確認する。


「私だって、本当は、こんなゲームしたくないんです。でも、お金のために・・・角は2こまでは取れるんだから、取りますよ」


最悪の取られ方だった。これなら、もっと早く取っておけばよかった。ムーンの言うとおりだ。2個まで取れるなら、早目にとっておいてもいいのだ。


「くそっ。でも、まだまだこれから。まだ、挽回できる」


背中に流れる嫌な汗を感じながら、半ば自分に言い聞かせるように言った。


パチッパチッ


お互いが、牽制しながら石を置いていく。

もう手からも汗が止まらず、盤面にも汗がしたたっている。


21巡目。先攻終了時


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先攻●ムーン

後攻〇とうふ


・敗者は死、勝者は賞金5000万

・盤面の角を取ると、場所代が発生。1つにつき2000万の負債。

 これは、敗者となり死亡した場合、近親者が代わりに債務者となる。

・持ち時間は1手につき2分。それ以降は、1分につき、1000万の負債。

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