同じか……
「これが私どもの真骨頂」「変幻自在の舞をとくとご覧あれ」
アマンダとカマンダがセーレに向かって同時に仕掛けた。
それはメイドという非戦闘職からは考えられないほど速く、鋭く、そして息の合った攻撃であった。
あるときは逆方向から、またあるときはまるで残像のように。あるときは完全にタイミングを合わせて同時に、またあるときは絶妙にタイミングをずらしてセーレを追い込んでいく。
セーレはそれを冷静にかわし、受け流していくが、さすがに手数は相手の方が上である。セーレの服は切り裂かれ、黒い衣装の間から白い肌が見え隠れしている。
「ふっ……」
しかし、セーレは楽しそうな笑みをこぼしていた。
社交的な者が多いサキュバス族にあって、無口なセーレは変わり者であった。
元々話し下手であったが、そのせいで仲間内で孤立することも多かった。それがさらに彼女の口数を減らす。
元々サキュバスは差別にあうことが多く、転々と居場所を変えながら暮らしていたが、仲間内ですら孤立してしまったセーレはついに一人きりになってしまった。
年若い女が一人で生きられるほど当時も今も帝国は安全ではない。当然のようにセーレは危機に陥った。
屈強な男どもに組み伏せられ、もはやここまでかと思った所で窮地を救ったのがルーヴェンディウスであった。
それ以来、やはりルーヴェンディウスのもとに身を寄せていたフォルネウスと姉妹の契りを交わし、ともにルーヴェンディウスの力になれるように努力を重ねた。
そして今の信頼を勝ち得ることができた。
「同じか……」
目の前で優雅に踊るエルフの姉妹を見てセーレは嬉しくなった。彼女たちもまた、努力を重ねて今の立場を勝ち取ったことは容易に察せられた。
エルフとはお世辞にも肉体的に秀でた種族ではない。しかし今、サキュバスのセーレを防戦一方に追いやっている二人の技能は、紛れもなく彼女たちの努力の結晶であろう。
その姿に自分とルーヴェンディウスを重ねる。
主のために必死で研鑽を重ねた日々。その記憶が蘇ってくる。
「このまま押し込みますよ、カマンダ」「ええ、わかってよ、アマンダ」
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