相手の方が一枚上手のようですね
「はぁぁぁっ……!」
フォルネウスがフェンに向かってまっすぐ走っていく。それに対しフェンも正面から立ち向かわんと駆け出した。
ここまで手を合わせ、スピードもパワーも自分の方が圧倒的に上だとフェンは確信していた。このまま正面からぶつかり合えば確実に相手を圧倒できる。
「がぁぁうっ……!」
フェンが首を伸ばしてフォルネウスを噛み砕こうとした、その瞬間――
「いけない……!」
庭の隅で見ていたリリムが思わず言葉を漏らした。無論その声はフェンには届かない。
まるでフェンがそうすることを見越していたかのように――いや、実際そうさせるように誘導したのだろう――フォルネウスは軽やかに跳躍してフェンの頭上を飛び越える。
跳躍したフォルネウスはフェンの頭上で一回転すると、その回転を利用して両手に持っていた六本のナイフを投擲した。
「はっ……!」
「がうっ……!」
その一瞬でナイフに何かが塗ってあることを看過したフェンは身体を捻った。
そのおかげもあり、フォルネウスの投げたナイフはすべてフェンの身体の脇を通り過ぎていって地面に突き刺さった。
――これで武器はなくなって!
フェンが武器を使い果たしたフォルネウスの着地を狙って飛び出そうとした。しかし――
――あ、あれ……?
フェンは飛び出すことなく、フォルネウスは悠々と着地した。
相手が着地してもフェンは動かない。
フェンは飛び出さなかったのではない。飛び出すことができなかったのだ。動けないのだ。
「
日はすっかり暮れ、夜のとばりが訪れているが、煌々と輝く満月が空を照らしており、フェンの影をくっきりと映し出している。フォルネウスの放ったナイフは六本ともフェンの影に突き刺さっていた。
毒の塗られたナイフがフェンに当たってもいい。当たらずとも影縫いでフェンの動きを封じることができる。
「どうやら、相手の方が一枚上手のようですね……」
リリムには見ていることしかできない。
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