戦闘メイドの真骨頂お見せしましょう
アマンダとカマンダはそれぞれの剣がぶつからないように少しの間を開けてセーレと対峙した。
「アマンダと申します」「カマンダと申します」
エルフのメイド姉妹は、まるで映し鏡のように同時に名乗ると、メイドらしく深々と頭を下げた。
「……………………」
それに対してセーレは無言で頭を下げ、剣を構えた。
「メイドと侮ることなかれ」「戦闘メイドの真骨頂お見せしましょう」
そして、寸分の狂いもなく同時にメイドたちは動き出した。ばらばらの方向へ。
「「はぁぁぁっ……!」」
メイドたちはセーレに対して正反対の方向から、完全に同時ではなく、絶妙にタイミングをずらして襲いかかった。
「…………!」
セーレは最初に攻撃を仕掛けたカマンダの攻撃に剣をあわせた。そこにほんの数瞬遅れてアマンダの攻撃が反対方向から襲いかかる。
肉を打つ音。
「ぐっ……!」
しかしそれは、アマンダの攻撃によるものではなかった。
くるくると回転しながら中を舞い、ゆっくりと落下軌道に入る一本の剣。
それが地面に落ちるよりも前にその剣の持ち主だったメイドがセーレのニーキックを食らって崩れ落ちる。
セーレはアマンダの攻撃が来るよりも先にハイキックでアマンダの手を狙って剣を弾き飛ばし、それによって生じた一瞬の隙を突いてアマンダのみぞおちに一撃を食らわせたのだ。
それをセーレはカマンダの剣を受けながら一瞬の間に行ったのである。
「げほっ、ごほっ……!」
膝をついて咳き込むアマンダを見たカマンダは冷静さを失った。
「はぁぁぁぁぁぁっ……!」
カマンダがセーレに向けてやみくもに剣を振り回す。しかしセーレはこれを冷静にかわし、あるいは剣で受けてすべてこれをいなす。
「……………………」
セーレがため息をついた。ちらりと横を見ると、義妹は楽しそうに狼と戯れているではないか。
つまらない敵と当たってしまったな。そういう考えが頭をよぎったその時であった。
「…………!」
完全にセーレの死角から剣のひと突きが飛び込んできた。セーレは直前でそれに気づき、すんでの所で身をかわした。おかげで致命傷は免れたものの、セーレの蠱惑的なドレスの腰の部分がぱっくりと割け、白い肌から赤い血が流れ出した。
いつの間にかアマンダが戦列に復帰してセーレに不意打ちを仕掛けてきたのだ。
「くっ…………!」
セーレは大きく跳躍して間合いを取ると、エルフの姉妹を睨みつけた。
そう、カマンダは自暴自棄になってやたらめったら剣を振り回していたのではない。
そう見せかけることによってセーレの意識を自分に集中させ、アマンダが剣を取りに行く時間を稼ぎ、さらに不意打ちを仕掛けさせる隙を作りだしたのだ。
「あら残念」「もう少しだったのに」
そうは言っているものの少しも残念そうではないメイド達。
セーレを挟んで対角線上に並んだアマンダとカマンダは再び同時に剣を構えた。
「これが私どもの真骨頂」「変幻自在の舞をとくとご覧あれ」
そしてまた同時に動き出した。
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