ほほほ、ごめんあそばせ
「いざ……!」
エルがそう言った直後、瞬間、その姿が消えた。
あまりの速度に消えたように見えた――のではない。本当に消えたのだ。
その証拠にエルは同じタイミングで別の場所に現われた。
まさしく瞬間移動。リリムに剣を抜かせた超速攻撃が本気でないというのは紛れもない事実だった。
リリムは先ほどと同じく、冷静に敵が動き出してからその動きを受ける。金属と金属がぶつかった甲高い音が再び草原に響き渡る。
次の瞬間、エルはまた消え、別の場所に現われ、リリムがそれを受ける。
それが一秒間に何十回も行われ、草原に甲高い音が連続で響き渡る。
「そらそらそらそらそらそらそらそらそらぁ!」
エルの姿は攻撃する瞬間にしか姿を現さないので、その動きに目がついて行けない者からみれば、草原の中で赤いドレスを着た美少女が一人で剣の舞を踊っているように見えたことだろう。
そんな攻防が繰り広げられること数十秒。少しずつリリムの防御が後手に回りつつあった。
ますます加速するエルの攻撃に、見てからしか判断できないリリムはどうしても一手遅れる形になってしまうのだ。
「そらそらぁ! どうしたでござるか? 守っているばかりでは勝てないでござるよ!」
瞬間移動を繰り返しながらエルがリリムを挑発する。
そんな明らかな挑発にリリムは乗ることにした。エルの全方向からの不意打ちをすべて防ぎながら、にやりと笑った。
「そうですね。では、こちらからも行かせていただきますよ」
リリムがそう言った次の瞬間、その場所から小さな影が猛烈な勢いで飛び出し、地面に突き刺さった。
リリムは右手に魔剣ソウルファイアを、左手に先ほどまでエルが持っていた剣を持ち、そして右足を大きく前に突き出していた。
「リリム様」「もっと慎みを」
白い足が見え隠れするリリムの姿にメイドたちが苦言を呈すると、リリムは足を降ろしてスカートを押さえ、
「ほほほ、ごめんあそばせ」
と、おどけてみせた。
「ぐ、ぐぬぬぬ……」
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