ヴァンパイアロード、ルーヴェンディウスさまのもとへ向かいます

「本日の面会希望は以上となります」

 グブロックの騒ぎの後も何人かの合流希望者や同盟希望者との面会を済ませ、ようやくヤックのその言葉を引き出すことができた。皆がほっとしたように息をついた。


「……………………?」

 そんな中、リリムの様子にいち早く気がついたのはフェンである。


「リリムさま、どうしたんですか? つかれた?」

 浮かない顔をしていたリリムは、いつもの笑顔を浮かべた。


「いえ、大丈夫ですよ。ただ……」

「ただ……?」


「当初に比べれば味方も増え、戦力も増しました。しかしまだ足りません」

 ウェリングバラの戦い以降、リリムの戦力は右肩上がりに増えた。

 動かせる戦力としては万を超え、更に増える勢いだ。今訓練を続けている新兵達が戦線に投入されれば更に増えるであろう。


 しかし、帝国の中枢を握っているダンタリオンや屈指の戦力を誇るアガレスなどとは文字通り桁が違うのも実情であった。

 ウェリングバラのように少数で多数を打ち破ることができた幸運がそう何度も続くとも思えない。リリムはそう考えていた。数は何よりも強力な力なのだ。


「やはり地道に勢力を広げ、各地の戦力を糾合していくしかないのでは?」

 グロムの提案にリリムは首を振った。


「それでは時間がかかりすぎます。そろそろ敵もわたし達の動きに気づき始める頃です。もたもたしていては数の暴力で磨り潰されてしまいます」


「リリムさまならだいじょうぶ。敵が何人いてもかてる」

 無邪気に笑うフェンだったが、それではダメだとリリムは言う。


「わたし一人で勝っても意味がないのです。民あっての国であると、アガリアレプトさまもおっしゃっていました」


「つまり、軍隊で勝たなければならない?」

 アドラメレクの言葉にリリムは頷いた。


「はい。そして、軍隊で勝つためには戦力が足りません」


「リリム様ニハ、オ考エガオアリノヨウデスナ」

 そういうヴェーデルを見て、リリムはにやりと笑った。


「はい。魔王家以外で最も有力な貴族に同盟を持ちかけましょう」

「魔王家以外……もしや……!」


「さすがはアドラメレクさん。察しがいいですね。そうです」

 リリムは玉座から立ち上がり、謁見の間に集まる仲間たちに向けて言った。


「ヴァンパイアロード、ルーヴェンディウスさまのもとへ向かいます」

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