リリム様の晴れの日に立ち会えて光栄です
明日より存分に働いてください
ウェリングバラを攻略し、フラウロス領を手中に収めたリリム達は、後処理のための人員を一部残してリヴィングストンに帰還した。リヴィングストンを守るアドラメレクから帰還要請があったからだ。
そこでは、リリムが支配するヴェパル領、アガリアレプト領、フラウロス領だけでなく、その近隣から数多くの参戦希望者、同盟希望者がリリムを待っていた。
「ゴブリン族エンヴァラ氏族、ンラービン。兵二七〇とともに推参つかまつりました」
リリムが座る玉座の前にひとりの体格のよいゴブリンが膝を折り、深々と頭を下げて名乗りを上げた。
「エンヴァラとは遠い所をご苦労様です。お疲れでしょう。今日の所はゆっくり休んで、明日より存分に働いてください」
「ははっ、格別のご高配、恐悦至極に存じます」
ゴブリンの族長は額をレッドカーペットに押しつけんばかりの勢いで頭を下げ、飾り気のない急ごしらえの謁見の間を辞していった。
「続いてはトロル族アビオン氏族――」
リリムの脇に立って謁見者の情報を伝えるヤックの言葉を遮るように部屋の外から声が聞こえてきた。入り口を守る兵のものだ。
「お、お待ちください! お名前を呼ぶまでは――」
「ええい、うるさい! 俺がどうするかは俺が決める! 貴様ごときに決められる筋合いはない!」
外での騒ぎにリリムはフェンと顔を見合わせ、グロムは眉をひそめた。
「何ヲシテイル! リリム様ガオラレルノダゾ!」
ヴェーデルが扉の方へ向かい、叱責の声を上げた。その時であった。
謁見の間の樫でできた大きな観音開きの扉が勢いよく開かれた。
その直後に扉から兵士が一人、飛び込んできた。
突き飛ばされたのだろうか、その兵士は後ろ向きに吹き飛び、扉の前までやってきたヴェーデルに抱きかかえられた。彼は意識を失っていた。
「何事!?」
グロムが腰を落として臨戦態勢に入った(謁見の間では武器の持ち込みは禁止されている)。謁見の間に緊張が走る。
「グウェッヘッヘ。このグブロック様が直々に来てやったぞ」
現われたのは獣の皮をなめしたような腰巻きを身につけた巨大なトロルであった。
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