どうして牢に入れられていたのですか?

「リリム様、これでウェリングバラ指導層に対するすべての対応が終了しました」


 アマンダからそう聞かされたのはとうに夜が明け、ステンドグラス越しに謁見の間を日の光が真上から照らすような時間であった。


 バットリーの街を開放したときと同様、街を支配する貴族達全員に対して評価が行われ、バットリー同様、およそ九割の貴族達が死罪、もしくは追放の刑に処された。


「それでは皆さんお疲れさまでした。これにて解散……あら?」

 リリムが皆を労って解散しようとしたとき、謁見の間に一人の男が連行されてきた。人間かと思われたが、少し耳が尖っているのでハーフエルフであると推察された。


「その方は?」

「地下牢の奥に閉じ込められてたんでさあ。罪人がと思ったんスが、ヤロウ、罪人じゃなくてフラウロスの側近だって言ってるんで、連れてきたってワケでさあ」


 男を連行してきた矮躯の男、ノームのルールーがへらへらしながら言った。ルールーはヴェーテルに言葉遣いに気をつけろと注意されたが「サーセン」と気にした様子もない。


「いいでしょう。こちらへ」

 そう言われたが男はどうやら一人ではまともに歩けない様子だった。ルールーに支えられてようやく玉座の前まで来ることができた。


 聞けば、牢に入れられてから数日間、飲まず食わずだったらしい。

 リリムはカマンダに命じてスープを用意させると、それを飲みながらの面会を許可した。


「あ、ありがとうございます……!」

 男は深々と頭を下げると、勢いよくスープを飲み始めた。


「それで、あなたは? どうして牢に入れられていたのですか?」

「はい、実は……」

 彼はスープを一気に飲み干すと、少し落ち着いたのか少しずつ語り始めた。


 男は自らをヤックと名乗った。

 元はこのウェリングバラの文官だったが、その能力を認められて分析官のような仕事をしていたという。

 そこでヤックはいち早くリリム達の反抗を予測してフラウロスに進言したが、聞き入れられず、逆に牢に入れられたという。

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