内戦を首謀した者については死刑となっています

「た、助けて! 命だけは……お願い……!」

 哀れなまでに怯え、序面を懇願するフラウロス。彼が転がされている高級絨毯に何らかの液体によるシミが広がっていく。


 リリムはため息をついた。これが主を殺した敵なのか。あの偉大なアガリアレプトを殺した皇子であるならばせめて相応の器の大きさを持っていてほしいと思ったが、この程度の器だから寄ってたかってアガリアレプトを謀殺したと言えるのかもしれない。


「下がってください」

 リリムが命じると、グロム、ヴェーテル、フェンの三人はおとなしく元の位置に戻った。フェンはもちろん元の少女の姿に戻っていた。


「す、すまない。助かった。この礼は全身全霊をかけて愛しき弟アガリアレプトの仇をとることで――」


「あなたは――」

 フラウロスの言葉を遮るようにリリムが言葉を開いた。


「あなたはここに弁明を行うために連れて来られたのではありません」

「で、では何のために……?」

「もちろん、判決のためにです」

「は、判決……?」


 フラウロスの顔色が少しだけ良くなったように感じられた。もしかするとこの期に及んで無罪放免などという都合のいいことを考えているのだろうか。


「わたしは――アガリアレプトさまは――この帝国を法が支配する平等な社会の建設を望んでいます。内乱下の帝国ではその実効性に疑問は残り、また多くの不備を持っている現行法体系で、それは是正しなければなりませんが、それも正当な手続きを経なければ法として効力を持ちません」


「な、何の話を……ひぃっ……!」

 フラウロスが悲鳴を上げたのはリリムの話の腰を折ったフラウロスを三人が睨みつけたからだ。


「現在の法では殺人に対する罰はどうなっていましたっけ?」

 リリムが背後に控えるメイドに聞くと、右側に控えるメイド、カマンダが答えた。


「殺人、特に親族に対する殺人、およびその共謀に関しては死刑、または百五十年以下の有期、無期の懲役となっています」


「な、何を言っているんだ! 魔王家にそんな法律が通用するか!」

 フラウロスが抗議をするが、リリムには全く聞こえなかったかのように完全に無視してさらにメイドに聞いた。


「内戦を引き起こした罪についてはどうなっていますか?」


 それに応えたのは左側に控えるメイド、アマンダだった。

「内戦を首謀した者については死刑となっています」


 それに満足したリリムは頷いた。

「ありがとうございます、二人とも」

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