リヴィングストンは敵軍の包囲下にあり
「それで、報告とは何でしょう? リヴィングストンに何か問題でも?」
「おっと、そうだった」
報告のことをすっかり忘れていたのか、完全にリラックスしていたルールーは背筋を伸ばしてリリムに敬礼した。
「現在、リヴィングストンは敵軍の包囲下にあり。旗の紋章によると、敵軍は第四皇子・フラウロス」
「やはりフラウロスですか。しかし、動きが早いですね。フラウロスはアガリアレプトさまが謀殺されるよりも前に軍を動かしていたとみて間違いないでしょう。あの時、最初から殿下を殺すつもりだったのです」
リリムは悔しそうに歯を噛んだ。ルールーは報告を続ける。
「その数、およそ二万二千。対するリヴィングストン側は門を閉め、籠城の構えを取っているみてえだ」
「二万二千……。こちらの戦力はわずか四〇〇。厳しいですね」
副官として脇に控えていたワータイガーのグロムが唸った。
しかし、リリムはそれほど悲観していなかった。
「ルールー、リヴィングストンの城壁内に忍び込むことはできますか?」
「楽勝でさあ!」
お調子者らしく、大きく胸を張りどんと叩くルールー。フェンやオーガのヴェーテルがその態度に眉をひそませるが、このお調子者はそんなこと全く気にしない。
「では……」
リリムはフェンに紙とペンを持ってこさせるとさらさらと何かを書き記して封筒に入れ、蝋で封印をするとルールーに渡す。
「これを、おそらく領主の館に詰めているデモン族のアドラメレクという人に渡してください」
「お任せあれ!」
そう言い残してルールーは消えるように屋敷から出て行った。
「妙案がおありで?」
ルールーの気配がなくなったあと、グロムがリリムに訊いた。
「はい」
「サスガ、リリム様」
ヴェーテルの言葉にフェンもこくこくと頷いた。
「これから説明します。フェン、リヴィングストン周辺の地図をこちらに」
「はい」
ぱたぱたと走っていくフェンを見て、リリムは少しだけ表情を和らげた。
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