大丈夫ですよ、きっと
「しかし、心配しなくても大丈夫です。あなた達は十分にやっていけるはずですし、わたしの成そうとすることによってさらに良い方向に向かっていくはずです」
「リリムさまがお決めになられたことです。私たちが否やと答えることはありません。ですが――」
住民達の代表の青年――彼は評議会の代表であり、のちに行われる選挙で正式に町長に認められる人間族であった――がリリムに頭を下げた。
「くれぐれもお気を付けください。帝国は広く、今だ魔王家の支配は盤石です」
心の底から心配しているような青年と、彼の後ろに控える多くの人々に向けてリリムは微笑んだ。
「心配してくれてありがとうございます。でも――」
リリムは彼女の後ろ、街の外で控えている軍勢に目を向けた。
そこにはかつて奴隷戦士だった者達を中心に、二百名ほどの戦士がリリムを待っていた。
リリムはバットリーを出るとき、革命軍をふたつに分けた。
そのほとんどがリリムとの同行を望んだが、リリムは以前からこの街を守っていた帝国軍をほとんどそのまま街の守備隊として残すことにした。他の皇子の軍隊が攻めてきた場合に備えてである。バットリーは皇女の住む街ということもあり、高くて堅牢な城壁があったが、万一のことを考えた。
唯一、最後までリリムと敵対して戦ったグロムは他の帝国兵との関係を考えて同行させることにした。
一方で奴隷戦士達は外から連れられてきた者も多いので希望者――ほとんど全員だったが――は連れて行くことにした。今彼女の後ろに控えている者たちだ。
リリムは新しく彼女の兵士となった元奴隷戦士達を見た。
「大丈夫ですよ、きっと」
そしてリリムは城塞の外へと歩みを進めた。
〈魔王因子〉を継承したリリムの軍勢は、このわずか二百余名から始まる。
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