バットリーの街は皆さんの名の下に解放されたことを宣言します!

 文字通り最後の砦だったグロムが膝を折ったことで、貴族達を守るものは一切なくなった。


 しかしリリムは民衆が屋敷になだれ込んで貴族達をなぶり殺しにすることを望まず、半死半生であるヴェパルを見せることによって自発的に投降させた。


 そして衆人見守る中、リリムは領主の館に掲げられていたヴェパルの紋章が描かれた旗を降ろし、宣言した。


「皇女ヴェパルは倒されました。今ここに、バットリーの街は皆さんの名の下に解放されたことを宣言します!」

 街中を歓声が響き渡り、その熱狂は夜が明けるまで続いたという。




 既得権益を享受していた貴族達は、ほとんどが戦うことなくリリムの前に投降した。


 これをリリムは自らの独断で処断することはなく、街の人々から人口動態に応じて住民の中から無作為に選び出した評議会に委ねた。


 事前に言い含めていたこともあってか、評議会は感情に左右されることなく純粋に革命以前の行動によってのみ刑が決められた。


 具体的には、皇女ヴェパルを含む全体のおよそ二割が死刑。およそ半数が有期無期の懲役刑。二割が財産没収ののち放逐、財産没収のうえ街の残留が許されたのはわずか一割だった。


 皇女ヴェパルはリリム自身が首をはねたのち、三日間さらされ、衆人監視のもとその身は火あぶりにされた。


 ここにリリムの最初の復讐は達成された。


 そしてバットリーの街に平穏が取り戻されてから一週間――


「本当に行ってしまわれるのですか、リリム様?」

 街の正門にはリリムを出迎えるために多くの市民が集まっていた。


「はい。余所者であるわたしがここを統治してもそれはいずれ支配になってしまいます。それに――」

「リリムさまにはすることがある」


 リリムの言葉を継いだのはあの狼に変身する灰色髪の少年だ。その後ろにはオーガのヴェーテルやワータイガーのグロムが控えている。

 リリムは少年の頭を撫でながら頷いた。

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