オマエ、強ソウダナ
『鉄壁』のグロム――かつてヴェパル領で反乱が起きたとき、奇襲を受けた総司令官を逃がすためにただ一人その場に留まり、数百人からの反乱兵を相手に一歩も退かず、生還したことからその二つ名で知られるようになった歴戦の
自分をここまで引き立ててくれた軍に忠誠を誓っており、今も軍のほぼ全員が反旗を翻した中、文字通り最後の砦であるこの場所を死守するために立ち塞がっている。
「『鉄壁』がなんだってんだ! 四人でかかれば……! いくぞ、お前ら!」
「おう!」
丸太を運んできていた獣人四人組が一斉に襲いかかった。彼らも軍の出身なのだろうか、その動きには統制が取れており、熟練の技を感じさせた。
「甘い」
しかし、小手先の技と連携では圧倒的な実力差を覆すことはできなかった。
「ふんっ……!」
グロムは獣人たちが運んできた丸太ほども太い腕で力任せに手に持った鉄塊のような大剣を振り回した。
瞬時に対応して剣で受け止めたのは獣人たちの日頃の訓練のたまものなのだろう。しかしそこまでだった。グロムの圧倒的パワーによって四人もまた最初に屋敷に入った男たちと同様に屋敷の外に弾き飛ばされた。
「う、うぅ……。強すぎる……」
そのまま獣人たちはばたりと気を失って動かなくなった。
その様子を見て打倒貴族に燃えていた民衆達に水が差される。
グロムが扉前に集まっている人々を睨みつける。それだけで民衆は数メートル後ずさってしまった。
「俺とて無辜の民を傷つけるのは忍びない。しかし――」
グロムが剣を両手に持って正眼に構える。
「大恩ある帝国に逆らうのであれば容赦はしない!」
その一言に民衆は恐怖した。短絡的に貴族に抵抗したことに後悔した者すらいた。
しかし、そういった恐怖とか後悔とは無縁の声が『鉄壁』に投げかけられた。
「オマエ、強ソウダナ。オレト殺リアワナイカ?」
屋敷のエントランスにやってきたのは粗末な革の鎧に大きな斧を片手で軽々と担ぎ、不敵な笑みをたたえるオーガであった。
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