血筋の名の下に搾取してきた奴らに捌きの鉄槌を!
「貴族は殺せ!」
「血筋の名の下に搾取してきた奴らに捌きの鉄槌を!」
領主の館の庭には老いも若きも、男も女も、商人も労働者も奴隷も、エルフもドワーフも獣人も、ありとあらゆる平民達が集まっていて怒号を撒き散らしながら閉ざされたままの門を叩いていた。
「どいたどいた! これで門をこじ開ける!」
人々が道を空けると、そこには近くの森から切り出してきたのか、直径二メートルもあろうかという丸太を四人の屈強な獣人たちがかついでやってきた。
「いくぞ! せぇの!」
獣人たちが勢いをつけて丸太を扉にぶつけると、一撃でその頑丈そうな扉は破壊的な音とともに大きくひしゃげた。
「もういっちょう!」
獣人のリーダーのかけ声によって丸太がいったん下がり、再び扉にぶつけられた。
その衝撃によって扉と壁を接続する蝶番が破壊され、領扉の扉は二枚とも館内部に吹き飛んだ。
「いくぞ! 貴族は一人も逃がすな!」
「あっ、てめえ! オレ達が開けたんだぞ!」
しかしその叫びも空しく、屋敷への一番乗りを果たしたのは丸太を持ち込んだ獣人たちではなく、扉近くにいた若者たちだった。
次々屋敷の中に入っていく怒れる民衆達。
しかしその直後、今まさに入ってきた民衆達全員が弾き飛ばされ、屋敷の外に戻ってきた。
「な、何が起きたんだ?」
丸太を持った獣人が屋敷の中を覗いてみると、屋敷のエントランスにある階段を守るように大きな剣をかついだ虎の獣人がそこには待ち構えていた。
「あ、あんた……『鉄壁』のグロム!」
グロムと呼ばれた虎の獣人は、ぎろりと睨みつけると、つまらなそうに言い放った。
「誰だ? 軍の裏切り者か? まあ、誰でもいい。ここを俺が守っている以上、何人たりとも通すわけにはいかん」
『鉄壁』のグロム――かつてヴェパル領で反乱が起きたとき、奇襲を受けた総司令官を逃がすためにただ一人その場に留まり、数百人からの反乱兵を相手に一歩も退かず、生還したことからその二つ名で知られるようになった歴戦の
自分をここまで引き立ててくれた軍に忠誠を誓っており、今も軍のほぼ全員が反旗を翻した中、文字通り最後の砦であるこの場所を死守するために立ち塞がっている。
そういう男だ。
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