舐めるな、下郎が!
リリムはその並ぶ者のいない身体能力を生かし、コロシアムのフィールドから観客席最上階にある貴賓席にまで一気に跳躍した。
直前までコロシアムの中央にいた奴隷戦士がその一瞬後には目の前に現われたということに、ヴェパルの護衛達は虚を突かれた。
しかし、彼らは理解がおよぶよりも先に身体が主を守るために動き出していた。
そういう点で彼らは正しく皇女を守るにふさわしい精鋭なのだろう。
ただ、相手が悪かった。リリムにとってはその一瞬の隙があれば十分だったのだ。
「ふんっ……!」
リリムが手刀を一閃すると、ヴェパルを守っていた六人の護衛達は一人の例外もなく首を刈り取られて絶命した。
それを見たヴェパルは遅れて驚きと恐怖の表情を浮かべ後ずさる。
「な、何奴! 妾を皇女ヴェパルと知っての狼藉か!」
「第一皇女ヴェパル。あなたは生きている資格がありません。ここでアガリアレプト様に代わり、わたしが殺します」
リリムが手刀をヴェパルの目の前に突き出すと、混乱から立ち直ったヴェパルは不敵な笑みを浮かべた。
「アガリアレプト……? 貴様……アガリアレプトの従者か?」
もしかして、今戦っていたのがリリムだということを理解していなかったのだろうか。その事実にさらに怒りが沸き起こる。
「ふっ、たかが人間の従者ごときに、この妾を殺すことなどできるはずもなかろう?」
そこにははっきりと嘲りの感情が含まれていた。アガリアレプトを虫けらのように殺したときと同じ表情。
リリムの心に常にくすぶっていた怒りの感情が燃えあがる。
「ならば、試してみましょう」
「舐めるな、下郎が!」
先に動き出したのはヴェパルだった。
「アガリアレプトのものだったこの剣に斬られて死ね!」
ヴェパルはどこからか刀身の赤い剣を取りだし、殺意の込められた攻撃でリリムに斬りかかった。
その軌道は正確にリリムの首筋に直撃したが、その剣はリリムに髪の毛ほどの傷を付けることも出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます