七百七十四番の必殺光線攻撃ー!
「電撃の威力調整を間違えたのでしょうか? いえ……」
あの狼の並々ならぬ戦闘意欲――言い換えるならばリリムへの殺意がそうしているのだろう。リリムは狼に対する脅威度をさらに一段引き上げた。
その狼は身体を起こそうとしたが力が抜けて地面に顎から落ちていった。
「ガルルルルル……」
狼がリリムを睨むが、身体が動かないのか、それ以上のことはしてこない。
「勝負は決しました。おとなしく…………!!」
リリムが息を呑んだ。
瞬間。狼の全身に爆発的に力が集まってくるのを感じた。狼の口が大きく開き、そこに光が集まってきている。
コロシアム全体を白く染め上げるほどの閃光とともに、狼の口からリリムの背丈ほどもあろうかという太さの光線が放たれた。
「…………くっ!!」
〈魔王因子〉を持つ今のリリムであれば回避することなど容易い単調な動きの光線だった。しかし、リリムは敢えて光線と対峙する道を選択した。
リリムの背後にはコロシアムの観客席があり、リリムが回避した場合、観客席への被害は避けることができないからだ。
アガリアレプトは帝国の民を愛する皇子であった。その意志と〈魔王因子〉を引き継いだリリムもまた、リリムとアガリアレプトに反抗しない限りなるべく命を奪いたくなかった。
彼らもまた、魔王たる資格を持つリリムの民なのだ。
「ふんっ!」
右手に魔力を込め、光線にあわせて腕を振る。バチンという音とともに光線は弾かれそのままコロシアムの上空へと飛んでいき、消えていった。
「七百七十四番の必殺光線攻撃ー! しかしリリム、これをなんと素手ではじき返した! 今まで何人ものファイターを屠ってきた必殺技だったが、リリムには効かずー!」
自分たちの命が危険にさらされていたとは露ほども知らず、実況の煽りに狂喜する観客たち。
「グ、グ、ガ……」
そうしている間に先の電撃の効果が薄れたのか、まだ足元が覚束ないものの、狼が立ち上がっていた。
そのまま先ほどと同じように口元に光線が集まり――
「その攻撃は効かないと――」
リリムも先ほどと同じように右手に魔力を集めて対処しようとした。
しかし――
「グゴガァァァァッッ!」
先ほどと同じくコロシアム全体を明るく照らすような閃光とともに放たれた光線はしかし、先ほどとは異なりリリムのいる方向とは全く関係のない方向へと放たれた。
それはコロシアムの最上段をかすめて青空へと消えていく。崩れた屋根の一部が観客席に落下して一部の観客たちを押しつぶし、周囲の観客たちがパニックに陥った。
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